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妄想 2005/09/05
BL30――ボーイズラブ成分30%含有。

という意味ではないはず。断じて。
吉祥寺の駅前から西に向かい、繁華街と住宅街のたたずまいが入れ替わるあたりに、「ダンディゾン」というパン屋さんがある。
ギャラリーかブティックのようなオシャレな造りの店で、パン好きたちの間ではわりと有名らしい。実際、同じ建物の2階がギャラリー、1階がブティックになっていて、くだんのパン屋さんは地下1階にある。
きのう、そこへ行ってみた。

以前、ネムネムやリムリムとここへ来た時、パンの前に1階のブティックを見てみたいという女どもの意見を取り入れたところ、気づいたらパン屋さんの営業時間が終わっていたという悲劇を見たので、今回はぼくひとりで乗り込んでみた。
パン屋というあたたかげな響きからは想像もつかないクールで無機的な店内は、まさに前衛的なギャラリー状態だった。よくあるパン屋のような、トレイとトングで好きなパンを選ぶという買い方ではなく、欲しいパンがあったら店員さんに声をかけて、その店員さんに取ってもらうという買い方で、しかも選んでいる横から店員さんがパンの解説を勝手に始めてくれるところは、これまたブティックさながらである。

そこでぼくがあしたの朝食にと思って買ったのが、「BL30」というスタンダードな食パンだった。
食パンといっても、サイズ的には市販の食パンの半分程度で、逆に価格は3倍くらいする。ここは有名な店なので、いろんなサイトやブログで紹介されているのだが、みんなが声を揃えてまず主張しているのが、とにかく高いということだった。
だが、ぼくとしてはその価格より、「BL30」という冷徹なネーミングが気になった。ここにはほかにも、「BE20」や「S77」といった食パン系のパンがある。あんぱん系のメニューにはわりと当たり前な名前がつけられているのに、この基本の3種類にだけ、こんな記号みたいな名前がついているのだ。

BLといえば、ぼくたちの業界的にいえばボーイズラブと決まっている。すなわちこのパンにはボーイズラブ成分が30%ほど含有されているということなのか。
そういえば厨房ではたらくスタッフは、みな線の細いハンサムな男性たちばかりだ。
さては……! いや、まさか……?

「そんなバカなことあるわけないでしょ」
翌日、軽くトーストしたパンをもしゃもしゃ食べながら、眠そうな顔でネムネムがいった。
「サイトにこのパンの説明が書いてあるじゃん。フレッシュバター30%+牛乳って」
「あ」
「要するに、BはバターのB、Lは牛乳のLってことでしょ」
「バターはともかく、牛乳はLではなくGでは?」
「素でボケてどうするの? 日本語じゃなくてフランス語よ。牛乳はフランス語でLaitって書いてレって読むの。カフェ・オ・レのレ。つまりこのパンはバター&牛乳、フランス語でいえばBeurr et Lait(ブール・エ・レ)ってことでしょ」
さすがはネムネム、遠い忘却の彼方に消えつつあるとはいえ、大学時代にフランス語を習っていただけのことはある。
「じゃあBE20は? バター20%+水のスタンダードなパンって解説されているが」
「Beurr et Eau、ブール・エ・オーでしょ、きっと」
「むう」
「何にしても、このパンの一番の欠点は、あっという間に食べ終わっちゃうってことよね。おいしいのは間違いないけど」
「うん、ホントおいしいよね〜」
フレンチやイタリアンのお店に行くと、時にメインディッシュが来る前にパンだけで満腹になってしまうことがあるという、無駄に不思議な才能を持つリムリムは、高いパンを手で豪快にちぎって食べている。
なるほど、こんな偏食娘がいるかぎり、確かに毎朝の食卓にこのパンをバスケットに入れて出すわけにはいくまい。