Calendar
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< September 2005 >>
LatestEntry
Category
Archives
Web拍手

↑クリックすると↑
web拍手が送れます
妄想 2005/09/26
ガハァ! を吐いた!

ではなく、血を噴いたお話。
今年は5年に一度の国勢調査の年のようで、ウチにも先日、調査票が届けられた。これはその時に起こった出来事である。

「○野さ〜ん、○野さ〜ん」
ネムネムとリムリムが揃って友人宅に遊びにいっていたある夜、ひとりで仕事をしていると、どこか遠くからぼくの本名を呼ぶ声がする。不審に思って玄関を出てみると、どうやら門の外に誰かいるらしい。
「はい?」
門を開けて表の通りを確認したところ、ママチャリでやってきたとおぼしいおばちゃんがいた。暗がりでよくは見えなかったが、少なくともぼくの知り合いではない。
「ああ、○野さん、よかった」
留守だと思って帰ろうとしていたところだったのか、ぼくが顔を出すと、おばちゃんはあからさまにほっとしたような声でそういった。
どちらさまで? とぼくが尋ねるより早く、おばちゃんは我が家への訪問の意図を述べ始めた。
「今年は国勢調査の年に当たってますでしょう? それで、こちらの調査票を書いていただくことになって――」

ずるっ!

その時、妙な水音とともにおばちゃんのセリフが途切れた。
「あ、あらやだ、は、鼻が――」
鼻声で気恥ずかしそうに続けるおばちゃん。何しろ街灯の明かりから遠いおかげであたりは薄暗く、ぼくにもよく周りが見えていなかったのだが、おばちゃんは慌ててずるずると鼻をすすり出し、
「あれっ? どうしてかしら? あらあら?」
とかいいながら、ウチに配る予定の調査票をママチャリのカゴに放り込み、荷物の中をまさぐっている。
最初はぼくも、「不意討ちで鼻水でも垂れてきちゃったのかしらん?」などと気楽に考えていたのだが、おばちゃんの狼狽振りを見ていると、どうもそうではないらしい。
いったい何がきっかけになったのかいまだもって不明だが、驚いたことにこのおばちゃん、いきなり派手に鼻血を噴いたのである。暗がりの中でも、おばちゃんの鼻の下あたりが黒く染まっているのがうっすらと見えた。
しばらくバッグの中を探っていたおばちゃんは、やがてヘンに情けない声でぼくにいった。
「すっ、すいません、○野さん、チリ紙いただけないかしら?」
「あ、はい」
ぼくが家の中からチリ紙を持って戻ってくると、おばちゃんはそれで鼻のあたりをぬぐい、ほっとしつつもどこか引きつった笑顔を浮かべて礼を述べ、何ごともなかったかのように調査票についての説明を始めた。

間近に見たおばちゃんの顔には、鼻の下から唇を縦断して顎の先まで、うっすらと血の跡がついていた。こういっては悪いが、かなり滑稽なペインティングである。
そんな顔をしながらいたって真面目そうに説明しているもんだから、こっちとしては笑いをこらえるのに必死だった。

そのインパクトがあまりに強すぎたおかげで、ウチみたいな特殊な世帯の場合の記入方法を聞くのを忘れてしまった。

くそう、何もかもあの鼻血のせいだ。