Calendar
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< October 2005 >>
LatestEntry
Category
Archives
Web拍手

↑クリックすると↑
web拍手が送れます
妄想 2005/10/28
えいこくこいものがたり話。

所用あってネムネムと吉祥寺に出た。
少し時間帯が遅めだったが、ときどき行くお店でランチ。
ビクトリア朝風というのか、とにかくそこはそういう雰囲気のカフェで、ひとり暮らしの頃からぼくはここをたびたび利用している。
そこでもぐもぐとごはんを食べながら、ふと気になっていたことをネムネムに尋ねてみた。
「『エマ』って、1890年代のハナシだっけ?」
「うん」
「ハキム、普通に阿片吸ってるよね」
「うん」
「ドーバー海峡の向こうはフランスだよね」
「うん」

先日読んだコミックビームの最新号で、エマとウィリアムがヤケにあっさりと再会してしまったことが、ちょっと気になっていた。
エマがさらわれるまでのエピソードが半年くらいかけて展開されていたから、てっきりふたりの再会までそれなりの時間をかけて描くんだろうなと思っていたところ、ウィリアムとハキムがアメリカまで乗り込んできていきなり再会、みたいになってしまったので、呆気に取られたのだ。

たぶんこれは、ちょうどその直前に、ぼくが『風と木の詩』を読んでいた影響もあると思う。
あれは『エマ』の時代より少し前のフランスが舞台だったはずだ。
物語のラスト、魔性の美少年ジルベールは、阿片漬けにされた上に男娼をやらされて、最後には馬車にはねられて、でもとても美しいまま、あっさりと死んでしまう。

だからぼくには、オドネルきゅんの――ひいてはキャンベル子爵のやり口が、とても甘く思えて仕方がなかった。エレノアとウィリアムの結婚に本当に邪魔だと思うなら、子爵さまはエマを拉致してアメリカに追いやるとかじゃなく、もっと徹底した方法で排除すべきだったのではないか。それこそ吉原みたいなところに売り飛ばすとか(パリならピガール?)、いっそどこかに沈めちゃうとか。
やり手のリチャード・ジョーンズ氏が「行動力がある」と評するキャンベル子爵にしては、そのへんの詰めが甘く思えて、エマが拉致されたあたりから、ずっと気になっていたのだ。

「ファンは見たくないでしょ、そんなの」
食後の紅茶を飲みながら、ネムネムはいった。
確かにそうかもしれない。いわれてみればぼくもそうだ。エマとウィリアムにはこのまましあわせになってもらいたい。ずっと控えめなしあわせだけで満足してきたエマが、またさらにヒドい目に遭うような展開だったら、途中で読むのが苦痛になっていたに違いない。

あの時代、もし本当にエマとウィリアムのようなカップルがいて、それを引き裂こうとする子爵さまみたいな人がいたら、きっとその女性は悲惨な目に遭っていただろう。
でも、『エマ』にそれがないのは、もしかしたら、森薫嬢がそういうリアルさを求めていないからなのかもしれない。「普通はこうなるよね」的なリアルさよりも、少しできすぎなくらいのハッピーさのほうが、読んでいて気分がいいし、何よりあのやわらかい絵柄にはそのほうが合っていると思う。
だから、たぶん『エマ』は、エマとウィリアムにとっては、すこぶるハッピーな終わり方をするんだろう。

「あれ?」
「どうかしたのかね?」
「このCD持ってる。ルイ・アームストロングだ」
店内のBGMを聞いて、ネムネムがいまさらそんなことをいい出しやがった。
ってことはこのお店、ビクトリアンじゃなくてアーリーアメリカンなんじゃないの? えいこくこいものがたりじゃないじゃん!
「別にいいじゃない、そんなこと。それよりこのCD、iPodに入れといて」

またかよ!