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妄想 2007/08/30
ぎぬう。

腹立たしいことに、本格的にリムリムの宿題を手伝うことになったぼく。いろいろと用意するものがあって、イヤイヤながらもいっしょに吉祥寺へ行くこととなった。
その道すがら、ぼくたちのかたわらを、リュックを背負った少年が足早に通りすぎていった。
とその時、リムリムがいきなりその少年のほうへと手を伸ばし、
「あー! あー! あー!」
と騒ぎ出したではないか。
「な、何だ、いきなり?」
一瞬、「ついにこの子を宇宙の深遠に住む超存在がお迎えに来たのか?」という最悪の予感が頭の中を駆け抜けたが、リムリムは伸ばした手をにぎにぎさせつつ、「あー! あー!」と繰り返している。何かいいたいことがあるのだがそれが出てこなくてもどかしい――というような表情だ。
一方、リュック少年のほうは、その唐突な声にリムリムを振り返り、こちらも何かいいたげな顔をしていたが、何度も振り返りながらも結局は何もいわず、そのまま走り去ってしまった。

少年を見送ってから、「あー! あー!」が治まったリムリムに尋ねてみた。
「今のはきみの友達か?」
「え? 誰?」
「今そこを小走りに通りすぎていった少年のことだ。きみが声をかけたら、向こうも何かいいたそうにしていただろう?」
「え? 別に声なんかかけてないけど?」
「何? だったらさっきの『あー!』はいったい何だったんだ?」
「いや、さっきそこに自販機あったから、『あー! 自販機自販機! 喉渇いた〜! うれうれ何か買って〜!』っていおうとしたんだけど、咄嗟に言葉が出てこなくて……」
「それで『あー!』だけ繰り返していたのかね?」
「うん」
「本当に?」
「そんなことでウソいってもしょうがないじゃん」
「可哀相に……この子は本当に馬鹿なのだな……」

ということは、さっきの少年は、リムリムの知り合いでも何でもなく、いきなりリムリムが自分に向かって奇声をあげたため、
「えっ!? だ、誰ちゃん? 誰だっけ? え、ごめん、マジで思い出せないよ! そっちもオレの名前思い出せないみたいだけど、どっかで会ったっけ? いや、でもオレ急いでんだけど、いい? 何がいいたいのかよく判んねえけど、とにかくごめん、行くわ、オレ!」
などという不必要な葛藤にさいなまれつつ、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った赤の他人だったということか。

――人さまに迷惑かけんのもいい加減にしろ、この小娘!