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妄想 2007/03/16
きのうの続き。

「はい、それじゃぼく、両手を自分のお尻の下に入れてみて〜」
手術はない、手術なんかしないんだ、と安心しているぼくに、看護婦さんがそうささやいた。
……?
なぜこの看護婦さんは、ぼくにそんなヘンなポーズをとらせるのだろう? ちょっと理解しがたい部分はあったが、幼稚園の頃から年上のおねえさんが大好きだったぼくは、さしてためらうことなく白衣の天使の言葉にしたがった。
すると、ほかの看護婦さんも集まってきて、なぜかぼくの足首だの肩だのを押さえ始めたではないか。
「!?」
はっとして視線をめぐらせると、両手を消毒した先生が、何やらメスらしきものを用意している――。

ま、まさか!?

「はーい、上見てねー。動くと危ないからねー」
そういいながら、あの看護婦さんがぼくの顔を掴んで固定した。
それでようやくぼくにも判った。
ずいぶんと駆け足で乱暴だけど、彼らはやはりまぎれもなく手術をするつもりなのだと!
両手を尻の下に敷かせたのは、ぼくの動きを封じるためだったのだ

「ちょ――!」
ぼくは反射的に身じろぎしようとしたが、にこやかな白衣の天使たちの力は意外に強かった。いくら相手が看護婦さんとはいえ、多勢に無勢&大人と子供のウェイト差の前では、ぼくの抵抗なんぞまるで意味を持たなかった。
「それじゃー切るよー」
マスクをした先生が近づいてきて、真上からぼくの顔を覗き込んだ。もちろんその右手にはメスが握られている。
貴様ァ! そのメスでいったいぼくに何をする気だ!?
などという威勢のいいセリフは当然のごとく出てこない。ぼくはただ身をかたくし、ぎゅっと目をつぶるくらいしかできなかった。
だが、その努力もむなしく、先生はあかんべーをさせるみたいにぼくの右目の下まぶたをぐいっと押し下げると、鋭いメスの先端を近づけてきた。
ギニャーッ!ぼくの脳裏に、ダリオ・アルジェントのホラー映画のワンシーンがよぎった。

結局、先生はぼくの下まぶたの内側の、脂肪が溜まっている部分をメスの先端で切り、じたばたしているぼくをよそに脂肪をしぼり出して、手際よく処置をすませた。要するに、少々デカいニキビを潰したようなものだ。
とはいえ、強引にこじ開けられた目に向かって鋭いメスが迫ってくる光景というのは存外に恐ろしいもので、幼い頃にアレを見せつけられたぼくが、よくもまあ先端恐怖症にならなかったものだといまさらながらに感心する。
術後、薬を塗って帰されたぼくは、しばらく眼帯をつけて生活することとなったわけだが、今になって思い返すだに腹立たしい後日談がある。

ロス五輪の少し前、NHKでやっていた『おしん』が気味が悪いくらいの大ヒットを記録していて、なぜかウチの学校では、「みんな夏休み中は『おしん』の再放送を見なさい! ためになるから!」というお達しがあった。
それとほぼ同時期に、『ボトムズ』が放送されていて、当然のことながら、ぼくは断然『ボトムズ』のほうが好きだった。
ところがウチの親は、眼帯をした状態でテレビを観ると視力が落ちるからといって、ぼくが『ボトムズ』を観るのを許さなかった。そのくせ、『おしん』だけは毎日欠かさず観せたのである。
――返せ! ぼくの『ボトムズ』を返せ!

「え? 結局それがいいたかったの?」
眼帯をはずして勉強に取りかかっていたリムリムが、ぽかんとした表情で振り返った。

うん。
眼帯で思い出したから吐き出した。