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妄想 2007/03/15
ドッゲェェエェェ!

「ただいま〜」
リムリムが学校から帰ってきた。
仕事中だったぼくは振り返りもせずに「おう」と生返事をしたのだが、なぜかリムリムはどこか誇らしげに、
「ねえねえ、見て見て〜」
などとぼくの肩をつつく。仕方なく、手を止めて後ろを振り返ると、リムリムが左目に眼帯をしていた
「……何かね、それは?」
現実の女の子が眼帯なんかしていてもちっとも萌えないということを確認したぼくは、ふたたびパソコンに向かって一応の義務として尋ねてみた。明らかにケガをしてつけている眼帯ではないということが判ったからだ。

「あのねー、そのねー」
バナナマン日村の貴乃花のモノマネのような出だしでリムリムが語ったところによると、どうやら学校で上級生だか下級生ともめたらしく、まあ、ちょっとしたケンカでこういうことになったらしい。
といっても、何か出血をともなうような怪我をしたわけではなく、何かがガツっとぶつかっただか目に砂が入っただか、まあ、本当にどうでもいいようなことで保健室に駆け込み、ぐだぐだとゴネて眼帯をつけてもらったらしい。
実際、眼帯の下のリムリムの目にはなんら異常はなく、別に目の周りに何か傷ができているわけでもなかった。ことさらオーバーな処置を頼んだのは、案外授業をサボろうという魂胆があったからではないか、などと邪推したくもなってくる。

と、そんなことを考えながら、ぼくはふと20年以上も昔のことを思い出した。

自慢じゃないが、ぼくは子供の頃から目が悪かった。視力が悪くてという意味ではなく、よくものもらいになったりするという意味で、要するに、たびたび眼科医のお世話になってきた。
アレは確かぼくが小学五年生の時、おりしも世間はロサンゼルスオリンピックで盛り上がっていた頃。ぼくは右目にかすかな違和感を覚えていつもの眼科医に行った。本当に些細なものだが、目を動かすと痛みが走るのである。
で、長年お世話になってきた先生に診てもらったところ、下のまぶたの内側に米粒大の脂肪が溜まっているという。それが眼球を圧迫するような形になって痛むのだろう、という見立てだった。まあ、まぶたの上から指を押しつけたまま、目をぐりぐり動かした時に感じるような痛みだと思えば間違いあるまい。

そう診断した先生は、付き添いの母に――ぼくにではなくぼくの母に――こういった。
切りましょう
別に今すぐどうこうということはないが、将来的にこれが肥大していく可能性もあるかもしれないので、小さいうちに切ってしまいましょう、というようなことを、ぼくの頭越しに母と話している先生。
当時はインフォームドコンセントなどという用語はおそらくなかったと思うが、いつものようにヘンな味の目薬をさしてもらって帰れると思っていたぼくは、「え? え? いったい何の話をしているんだ?」と、急に不安になってきた。

「じゃあぼく、ここに横になって」
不安でいっぱいだったが、結局何もいえなかったぼくは、看護婦さんにいわれるまま、診察室によくある長椅子みたいなものの上に横にさせられた。
と同時に、「こんな体勢で手術をすることなどない」と、子供心にそう思ってほっとしたのも事実だった。
手術といえば、あのマーブルチョコみたいな照明を上から照らしてやるものと相場が決まっている。当時から『ブラックジャック』を愛読していたぼくは、こんな長椅子の上でオペを始めるのは、それこそブラックジャック先生くらいしかいないと確信していたのだ。

つづく。