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妄想 2007/11/12
クッキング勇者少女。

「うれうれ、わたしのことを料理のひとつもできないガサツな女だとか思ってるでしょう!」
「うおっ!? テレパシーに覚醒!?」
「きょうはわたしがそうじゃないってところを見せてあげるから!」
「というと?」
手作りバターに挑戦よ!」
いったいどんな毒電波を受信したのかと思えば、あれよあれよという間にスーパーまで買い物に行って生クリームを調達し、空き瓶に詰めてシャカシャカやり始めたリムリム。
いったい何なのだろう、これまでぼくが料理をしていても、いっさい手伝うなどといったためしのない勇者の中の勇者少女が、なぜいきなりこんな女の子のような真似を?
「あれ……? おかしいな」
猛烈に瓶をシェイクすることしばし、リムリムは眉をひそめて首をかしげている。
「どうかしたのかね?」
「んー、なかなか分離しないの。テキトーに冷やしながら振ってれば、そのうち乳成分が分離してバターができるはずなんだけど……」

確かに、生クリームをはなはだしく攪拌することによってバターはできる。できるにはできるが、なぜかこの少女は、ジャムが入っていた小さな空き瓶に、口いっぱいまで生クリームを満たしてふたをし、必死に振っている。もう少し空間的な余裕がなければ効果的な攪拌は期待できないと思うのだが、いかがか。

「えっ? これじゃダメなの?」
「……作り方知ってるんじゃないのかね、きみ?」
「いやあ、学校の帰りに調理クラブの子に行き会ってさ、バター作るっていってたから、それをちょこちょこっと聞いて――」
「ちょこちょこっと小耳にはさんだ程度の知識でバターが作れるほど、きみは料理がうまかったのか。それは初めて聞いた」
「こっ、これはちょっとしたミスよ! えーと……あ、ほら、これ! このペットボトルに入れてシャカシャカやればいいんじゃない?」
そういって、自分が飲んだあとのスポーツドリンクのペットボトルをざっと洗っただけで使おうとするリムリム。だが、その動きがすぐに止まった。
「えー……」
「今度は何かね?」
「いや、その……どうやって移し替えようかと……」
なるほど、広口の瓶からペットボトルに生クリームをこぼさすにそそぐのは難しいだろう。この不器用な少女ならなおさらだ。
だが、ウチには漏斗のようなものはない。
しばし考えたあと、結局そのまま瓶を傾けてクリームを移し替えようとするリムリムを見て、たまらずに口をはさむぼく。
「……そそぎ口のついてる計量カップとかに一回移して、それからあらためてそそげばいいのに」
「あ」
「…………」
「大丈夫大丈夫! ここからは一気に行くから!」
少女の口からいつもの大丈夫節が飛び出したところで、ぼくはこのバターがきちんと完成しないであろうことを確信した