<< 妄想 2006/01/14 | main | ウレユサ日記17 2006/01/17 >>
 
Calendar
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< March 2016 >>
Category
Archives
Web拍手

↑クリックすると↑
web拍手が送れます
妄想 2006/01/15
きのうの続き。ちょっと修羅場った。

マフラーを編む手を止め、リムリムは喘ぐようにいった。
「お、終わらない……!」
「いまさら何をいってるんだ、きみは? けさはネムネムに、絶対きょう中に完成するって大見得切ってたじゃん」
「あの時はホントに完成する予定だったのよ! でも、編んでみたら何だか短くて、さらに毛糸ひと玉足して編み始めたんだけど――」
「そりゃあ終わらないだろうねえ」
絶望的な表情で――同時にひどく眠そうな顔で呻くリムリムに、ぼくは淡々といった。
「家に帰ってきてからご飯食べて『ぐるナイ』見て、きょうはトータルで3時間も編んでないんだから。……いまさら慌てるくらいなら、どうしてもっと早くからコツコツと編まないんだよ?」
編目が揃っていないというのか、素人のぼくから見ても、リムリムのマフラーはいびつなできだった。しかも、未完成なうえにひどく短い。こんなものを「はい、プレゼント」などと孫から渡されたら、おばあちゃんだって困るだろう。
多少は不細工でも真心をこめて編んだと判るものならまだいいが、正直いってこのマフラーのできはやっつけだ。ほんの数時間で慌てて仕上げようとしたのがありありと判る。
「いや、だからさっきもいったじゃん、きょうで仕上がると思ってたの、朝は!」
「その根拠のない自信がまず間違ってたんじゃない?」
リムリムがマフラーを編むのはこれが2本目で、1本目を編む時にはえらく悪戦苦闘していた。編んではほどき編んではほどきの繰り返しで、完成までに非常に時間がかかったのをぼくも知っている。
にもかかわらずリムリムは、2本目のマフラーは何のトラブルもナシに最後まで完成すると、勝手にそう思い込んでいたらしい。何と思い上がりのはなはだしい少女であろうか。
「きみがマフラー編みの天才だってんならともかく、普通はさ、途中でトラブっても対処できるように、余裕を持って編むもんなんじゃないの? だいたい、前回間に合わなくてさらに1週間先延ばしにしたのに、それでも仕上がらないってどうよ?」
「そ、それは……」
「ホントならこの前の日曜日に完成させておくべきだったと思うけど? たとえ日曜日が無理だったとしても、月曜日だってお休みだったし、そのあとだって火、水、木と3日あったじゃん。毎日1時間ずつ編めば充分完成したんじゃないの? なのに、リムリムはどうしてそう、やらなきゃなんないことを後回しにするわけ? 気づくと呑気に本を読んだりしてたみたいだけどさあ、この場合は読書とかは後回しにして少しでも編んどかなきゃダメじゃん?」
「だってー、あの時はホントにその本が読みたかったんだもん」
「んじゃあ、同じ理由で宿題をやってこなかったとしたら、きみんとこの担任の先生は笑って許してくれるということか?」
「う――」
「そもそもさ、これはきみがおばあちゃんに編んであげたいっていってやり始めたことだろ? するとアレか、要するにきみの中では、おばあちゃんのマフラーよりも読書のほうがはるかに重要なわけか? 本なんかマフラーを編み終えてからじっくり読めばいいって思うのはぼくだけか? だったら正直におばあちゃんにそういいなよ。――おばあちゃんにマフラー編むより読書のほうが大事だったから完成しなかったって」
「……どうしてそういうイジワルなことをいうわけ?」
「イジワルじゃなくて事実だよ」
これも男女差というヤツなのか、リムリムはすぐに感情的になって、「うれうれにはわたしの気持なんか判らないわよ!」とか、「だったら自分で編んでみればいいじゃん、どうせできないから!」とか、論点をあらぬ方向へとずらそうとする。
しかし、ぼくはそういうのにはつき合わない。

「誰にいわれたからでもなく、きみが自分でプレゼントすると決めて編み始めたマフラーだ。そして、それが完成しなかったのは100パーセントきみの怠惰さのせいだ。ぼくにきみの気持ちが判ろうと判るまいと、ぼくにマフラーが編めようと編めまいと、その事実が変わるわけじゃない。……と、ぼくはそう思うのだが、ぼくは何か間違ったことをいっていますか、リムリムさん? 反論があるなら感情的にならずに理路整然といってください、口達者なリムリムさん」
そういったら(本当にこういう感じでいってやった)、リムリムは大声あげて泣き出した。

ぼくは悪くない。
可哀相なのは孫からマフラーをもらえなくなるおばあちゃんと、孫から祖母へマフラーの贈り物を、という美談につき合って毛糸代をまるまる支払ったネムネムだ。

結局、マフラーは完成しなかった。
しかし、それでもリムリムは、春が来るまでには編み上げておばあちゃんにプレゼントするつもりでいる。
根性があるんだかただ単に学習能力がないんだか、よく判らない子である。