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妄想 2014/03/01
黒歴史:息を吐くように嘘をついた

確か初めてせた先生を交えて飯田橋でごはんを食べていた時に、「これ、今度出る『ザ・スニーカー』です」といって、96年4月末発売のザ・スニを編集さんから渡された。その、次号予告のページに、ぼくの名前が載っていたからである。
それを聞いて、ぼくと編集長のU氏は顔色を変えた。
実はこの年のアタマ、Z文庫での2冊目が出た直後あたりに、ぼくは集英社の担当さんから釘を刺されていた。要するに、「こちらに無断でよそのレーベルで書かないでほしい」というようなことをいわれたのである。レーベルが乱立する今では常識かもしれないが、どこかのレーベルで賞をもらってデビューした作家が、編集部に無断でよそのレーベルで仕事をするのは軽いタブーである。逆に、デビューしたばかりの新人作家に、デビュー元のレーベルに無断で声をかけるのもルール違反である(だいたいモメることになる)。

で、SF文庫の担当さんは、書店に並んだぼくのZ文庫の新刊を見て、初めてぼくが無断でよそで書いていることを知ったらしい。結果、「これに関しては、すでに出てしまっているし、モノもオリジナルではなくゲームノノベライズだからいいが、もしよその編集部から執筆依頼があっても絶対に引き受けないように」とのお達しを受けた。
だが、すでにこの時、ぼくはスニーカー文庫のU氏と打ち合わせをすませ、夏までにはスニーカー文庫で本を出そうということになっていた。
そしてぼくは、この時、それを集英社の担当さんには打ち明けられず、「はぁ、判りました」と承知したふりをしていたのである。

いい訳めいたことをいわせてもらえるなら、ぼくはデビューしてから一度としてSF文庫の編集部から作家としてのルールのようなものを教わったことがなかった。そもそも校正のやり方すら教わっておらず、校正紙を見て自力で覚えた。校正記号の使い方が間違っていると指摘されたこともあったが、教えてもらっていないんだからどうしようもない。新人にそういうことを教えるという意識自体が、最初から持っていないような担当さんだったのだ。
そんなわけだから、ぼくは業界の仁義的なこともいっさい知らなかった。当時のSF文庫の刊行ペースでは、ぼくが東京で部屋を借りてふつうに暮らしていくのは無理だったので、それぞれの締切さえ守れるのなら、並行して数社の仕事を引き受けたところで問題ないと考えていた(執筆速度にはすでに自信があったし)。
もしこれが、レーベル専属として拘束料金のようなものをもらえていたのなら別だが、少なくともぼくはそんな大物ではなかったし、「大賞作家デビュー!」とお金をかけてデビューさせてもらったわけでもない。だから余計に、ぼくがよそで書いたところで特に問題はないと思ったのである。

少なくとも、Z文庫で仕事をするまでは。