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妄想 2014/06/13
双子話:その1。

書く書く詐欺といわれないように、冒頭ちょこっと。書くといったら書くんだよ。
まあ、えらい人には特に断ってないので、最後までは上げられないだろうけどね。
何か機会があれば、きちんとした形でまとめたいけどね。ねねね。


       ――〈01〉――


 ふたりが初めて自分たちの金で家賃を払った部屋は、フェイトたちが住んでいるアパートの部屋よりも少し広い程度だった。
 ずいぶんと図体の大きくなったアルバとソワレがふたりで暮らしていくには、少しせまく感じるくらいの部屋だったが、広さそのものへの不満などなく、むしろ、ついに自分たちの力で自分たちの居場所を手にしたのだという達成感のほうがずっと大きかった。
 もちろん、このことでフェイトたちとの縁が切れたわけではない。ただ、アルバは、何から何までフェイトやチャンスの世話になっていたのでは、自分たちの枠を広げることができないと思ったのだ。
 古いアパートの、日当たりの悪い最上階の部屋から見えるスモッグにくすんだサウスタウンは、それでもアルバとソワレのふたりには、無限の夢と可能性が眠る新世界であった。
 それがふたりが18の時――。
 それからほどなくして、チャンスが姿を消した。
 ソワレにはその理由がよく判っていないようだったが、アルバは知っていた。
 よく手入れされた愛車とともにチャンスの最後の言葉を受け取ったアルバは、しかし、それを一生胸の奥にしまっておこうと思った。
 この新しい部屋からの風景を眺めながら、アルバはそう心に決めた。

      ◆◇◆◇◆

「――そっ、ソワレ〜っ!」
「うぇ!?」
 あわただしく店に駆け込んできたノエルの素っ頓狂な声に驚いたのか、ソワレの手もとがかすかにぶれた。
「バーストだ。運がなかったな、ソワレ」
 狙いを大きく逸れてボードに刺さったダーツを一瞥し、ギャラガーがにやりと笑う。
「ちょっ――ち、違うって! 今のはノエルのせいだろ!?」
「ああ、完全にアクシンデントだったな。……だからいったろ、運がなかったってよ」
 軽くウインクしてソワレを押しのけたギャラガーは、落ち着いた動きでダーツを投じた。1本目を17トリプル、2本目を20シングル、3本目を15のダブルに突き立て、トータルでジャスト101。
「ブレイクだ。悪いな、ソワレ。約束通り1杯奢ってもらうぜ。――姐さん、ヒューガルデンひとつ」
 呆然とするソワレを尻目に、ギャラガーはカウンターの内側にいたシャーリィにベルギービールを大ジョッキでオーダーした。
「は〜い、それじゃソワレにつけておくわね」
「――――」
 先攻さえ取れればまず負けない自信のあった101ゲームで思わぬ敗北を喫したソワレは、正気に立ち返るなりノエルを睨みつけ、その襟を引っ掴んだ。
「ノエル! おまえオレに恨みでもあんのか!? 今月オレがもう金がねえの知ってんだろ!?」
「ちょっ、ま、待て! 待ってくれって! そっ、それどころじゃねえんだよ!」
 荒い息をついてわめくノエルに、ソワレは眉をひそめて仲間たちと顔を見合わせた。ノエルは確かにいちいちオーバーなことをいうお調子者だが、いつもと様子が違う。
「と、とにかく1杯――み、水くれ……」
 カウンターにすがりつくようにしてスツールに腰を降ろしたノエルは、無口なデュードが用意してくれた冷たい水をひと息にあおった。
「いったい何があったってんだ、ノエル?」
「それがよ……ほら、オレ、この前クルマ買ったろ?」
「ああ、あの中古」
「中古っていうな! そりゃ中古には違いねえけど、オレがこつこつバイトして金を貯めて、カルロスんとこで――」
「ああ、はいはい、判ってるよ。……で、おまえのポンティアックがどうしたって?」
「それをよ、〈ブラーズ〉の連中が――」
「何?」
 それまで半分聞き流していたギャラガーが、ノエルの言葉に卒然と顔色を変えた。
「〈ブラーズ〉がどうした?」
「あいつら、オレのクルマをボコボコにしやがったんだよ! ホイールからカーステから、パクれるもんは全部持ってきやがって、あとはもうべこべこだよ!」
「確かに連中の仕業なのか?」
「まっ、間違いねえよ!」
〈ブラーズ〉は、ちょうどソワレたちと同じ年頃の、無鉄砲な若者たちが集まってできたストリートギャングである。“ファミリー”の息がかかったマフィアの予備軍ともいわれており、強盗まがいの真似や傷害事件も日常茶飯事という荒っぽい連中だった。
 もっとも、荒っぽいといってもしょせんは子供――と、フェイトあたりは最初から彼らを歯牙にもかけていない。〈ブラーズ〉のほうでも、さすがにフェイトほどのビッグネームにちょっかいを出すことはなかった。
 その〈ブラーズ〉が、知ってか知らずか、〈サンズ・オブ・フェイト〉の一員であるノエルの愛車のパーツを盗んだというのである。
「……厄介だな」
 ギャラガーはぽつりと呟いた。
「何がだよ!?」
「フェイトから、“ファミリー”とはトラブルを起こすなって釘を刺されてたのを忘れたのか?」
「“ファミリー”じゃねえって、〈ブラーズ〉だよ!」
「似たようなもんだろ。“ファミリー”がメジャーリーグなら〈ブラーズ〉はマイナーリーグだ。〈ブラーズ〉のチンピラどもは、いざとなりゃマフィアに泣きつくんだぜ?」
「泣きてえのはこっちだよっ!」
「勝手に泣いてろ。……どうせおまえのことだ、連中の目につくようなところに停めといたんだろ? 自業自得だよ」
〈サンズ・オブ・フェイト〉の若手たちの中では、アルバと並んでギャラガーがもっとも冷静で落ち着いている。それに、おっちょこちょいなところのあるノエルとは対照的な慎重居士で、フェイトたち目上の人間の言葉にも忠実だった。
「そういうなよ、ギャラガー」
 ギャラガーの前に置かれたベルギービールの泡をすすって、ソワレはこともなげにいい放った。
「――仲間じゃんか。取り返すの手伝ってやろうぜ」
「簡単にいうな、ソワレ――」
「ソワレ〜!」
 ギャラガーを押しのけ、ノエルはソワレの手をしっかりと握り締めた。
「どっかの誰かさんとはいうことが違うよなあ。やっぱ持つべきものは親友だぜ!」
「そういうこと大声で叫ぶなよ、恥ずかしい。……まあ、おまえのクルマがないと、オレたちだってみんなでどっか繰り出そうって時に困るしさ。他人ごとじゃないっていうか、なあ?」
「おい、ソワレ」
 ギャラガーは自分のビールを奪い返し、ソワレを軽く睨みつけた。
「……おまえ、人の話を聞いていないのか?」
「は? 何が?」
「だから、〈ブラーズ〉とことをかまえるのはまずいって話だよ」
「それは向こうだって同じだろ? あいつらだって、別に〈サンズ・オブ・フェイト〉にケンカを売るつもりでノエルのクルマを狙ったわけじゃない。……たぶんな」
「ああ、そうだろうな。じゃあ、だとしたらどうだっていうんだ?」
「オレたちだって〈ブラーズ〉にケンカを売るつもりはないさ。ただ、連中に取られたモンを取り返しにいくだけだよ」
「だけどおまえ――」
 ギャラガーは口をつぐんでデュードを見やった。
 ネイティブアメリカンの血を引く寡黙な大男のギャラガーは、〈サンズ・オブ・フェイト〉の主要メンバーのひとりであると同時に、このシャーリィの店――『カサブランカ』のバーテンとして、若い連中のよき相談役ともなっている。ギャラガーが意見を求めるようにデュードを顔色を窺ったのは、彼にソワレを止めてほしかったからだろう。
 しかし、デュードは我関せずとばかりに沈黙をたもっている。
 代わりに、頬杖をついてにやにや笑っていたシャーリィが、火に油をそそぐようなことをいい出した。
「あとになってフェイトたちに泣きつくような真似さえしなければ、別にかまわないんじゃないの? おねえさん、やんちゃな子って好きだわ〜」
「だとさ、ギャラガー」
 額に手を当てて溜息をつくギャラガーの肩を叩き、ソワレはテーブルを飛び越えた。
「――ハナシはついた! 行こうぜ、ノエル!」
「おまえがその気になってくれたのはありがたいけどよ、行くって……どこに行くんだ?」
「〈ブラーズ〉の溜り場になってる店とかって、知ってるヤツいるか?」
「……イーストサイドパーク近くの、高架下にあるジム・ヘンリーズって下品なバーだよ」
 答えたのはギャラガーだった。
「……おれは行かねぇからな」
「ダンケ、ギャラガー。それだけ判りゃあ充分だ」
 ノエルはギャラガーに軽く手を振り、ノエルたちとともに店を出た。
「――ジェイ、カルロスのところへ行ってレッカー車借りてきてくれ。ネオジオボウルの前で落ち合おうぜ」
「OK」
 ジェイとギグジーにクルマの手配を頼み、ソワレはノエルとともに夜の街を歩き出した。