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妄想 2014/06/19
きのうの『メンタリスト』。

シーズン5開幕。あのねっとりした感じのローレライは、第1話で殺されるもしくは逃げ出すと思っていたら、案の定、ラストには替え玉立てて雲隠れ。これって彼女の収監を決めたFBIの責任ということになるんだろうか。まあ、CBI(ジェーンさん)主体でレッド・ジョンの事件を捜査させるためには、FBIをでしゃばらせない必要がある=FBIに貸しを作って主導権を握る必要があるのは判るんだけど……。
ジェーンさんとCBIに捜査させる必要性から、FBIが無能の集団みたいに描かれるのはなあ。天才軍師の天才ぶりを描くのに、相手方の軍師がメチャクチャ無能に描かれるようなのは、ちょっと気になる。それともほかの作品での有能なFBI捜査官を見てるから、あんな短気なFBIいねえよ! って思ってしまうのか。
この作品では、ジェーンさん(+レッド・ジョン)以外の人間は、すべからくジェーンさんに手玉に取られる存在なので、これはこれでいいのかもしれないが。

ということとは無関係に、ひみつのお話、第2回。
双子好き以外はスルー推奨。


       ――〈02〉――


「なあ、ソワレ」
 ネオンサインが色あざやかな影を落とす夜のペニーレーンを歩きながら、ノエルはソワレに尋ねた。
「ヤツらンとこに乗り込むにしてもよ、ちょいと心細くねェか?」
 ソワレといっしょに店を出てきたのは、トラブルを持ち込んだ当のノエルとジェイ、それにギグジーの、合わせて4人である。くだんの店に〈ブラーズ〉のメンバーがどれだけたむろしているのかは判らないが、ひとりやふたりということはあるまい。
「……アルバにも助っ人を頼んだほうがよくねえ?」
「そいつはダメだ」
 口笛を吹いていたソワレは即座に首を振った。
「こんなハナシ持ちかけたら、手伝ってくれるどころか逆に止められるぞ? どっちかっていったら、兄貴はギャラガーの意見が正しいっていうだろうからな」
「ああ……そういやそうだな」
「それに、兄貴はまだバイト中だ」
「へえ、まだ続けてたのか、中華屋のバイト」
「中華屋っていうな。きちんとしたレストランだよ」
 ソワレとふたりで暮らし始めてから、アルバは外ではたらくようになった。その一方で学校へも通い、いろいろなことを勉強している。最近のアルバは、少し意識して〈サンズ・オブ・フェイト〉の仲間たちとの距離を置いているようだった。
 革ジャンのポケットに手を突っ込み、ノエルは唇をとがらせた。
「……アルバのヤツ、このまま真人間になっちまうつもりなのか?」
「いやぁ、あれはそういうんじゃないな、たぶん」
「たぶん……って、おまえ、聞いてないのか?」
「前に聞いてみたけど、はぐらかすだけで教えてくんねえんだよ、兄貴のヤツ。……ただ、兄貴がフェイトたちと縁を切ろうなんて考えてないことだけは確かだな」
「どうしてそう断言できんだよ?」
「オレの兄貴だぜ? だから何となくオレには判るんだよ、そういうの」
「そういうもんかねえ」
「そういうもんだよ。……たぶん兄貴のことだから、インテリギャングでも目指してんじゃねえの?」
「おまえとは大違いだな」
「うるせえ」
 頬を苦笑にゆるめ、ソワレはノエルの尻を軽く蹴飛ばした。

      ◆◇◆◇◆

 馴染みの修理工のガレージから借りてきたレッカー車に乗り合わせ、ソワレたちがギャラガーに教えられた店へとやってきたのは、じきに日付も変わろうかという頃のことだった。
「……あれか?」
 少し離れたところでトラックを停めさせ、ソワレは屋根の上に立ち上がって目を凝らした。くだんの店の看板は、ネオンサインがあちこち切れかけていて、ときおり耳障りな音を立てながら明滅を繰り返していたが、なるほど、ジム・ヘンリーズと読める。
 店の前には数台のクルマが停まっていたが、どれもこれも持ち主の正気を疑うような悪趣味な改造車ばかりだった。
「薄汚れた外観といい、集まってくる連中のセンスといい……確かにあんまり上品な店には見えねえな」
「どうする、ソワレ?」
「先にオレとノエルで様子を見てくる」
「ふっ、ふたりだけで乗り込むのかよ!?」
「まずは確かめなきゃなんねーだろ? あのステキなおクルマの中に、ホントにノエルの大事なカーステレオを積んでるヤツがあるのかどうかをよ」
「あ、ああ、そうか……」
「もし見つけたら合図するから、ジェイとギグジーはこいつで乗りつけて、引きずってく準備をしといてくれ」
「だ、大丈夫か、それ……?」
「大丈夫だろ。あいつらだって、クルマ盗まれましたなんてケーサツに届け出たりしねえさ」
「そうじゃないって! いくらなんでもすぐにバレるだろ! 店の真ん前なんだぜ?」
「そこはまあ、このソワレさまに任せときなさいって」
 自信たっぷりに胸を叩いたソワレは、どこか不安そうなノエルをともない、幅広の道路を平然と横切っていった。
「ソワレ、おまえ、何も武器とか持ってきてねえの?」
「賞金の懸かったストリートファイトはベアナックルが基本だぜ?」
「ストリートファイトじゃねえだろ、今夜は」
「ははっ、トレーニングくらいにはなるかもな」
 アルバがアルバなりのやり方で生活費を稼いでいるのを見て、ソワレも自分の遊ぶ金くらいは自分で稼ごうと考えた末にたどり着いたのが、つまりはすこぶる単純なこの方法だった。アルバがバイトと学業に専念している間、ソワレは路上での喧嘩に明け暮れていたのである。
 そうした場数を数えきれないほど積んできているからか、まだはたちにもならないというのに、ソワレは修羅場での度胸がやけに据わっている。これから大人数を相手にひと騒動やらかすかもしれないと判っているのに、まるでクラブに踊りにでもいくかのように、その足取りはあくまで軽やかだった。
「ついてけねェぜ、ったく……」
 手頃な長さの角材を胸に抱き、ノエルはぼやいた。
「どうにかしてくれって泣きついてきたのはおまえだろ? いまさらガタガタぬかすなよ」
「……わーったよ! いとしのカーステのためだ、オレも腹ァくくるぜ」
「それにしても……近所迷惑とか考えてねえのか、こいつら?」
 店の外にまであふれ出てくるジュークボックスの音に顔をしかめ、ソワレは大袈裟に溜息をついた。
「ま、おかげでちょっとくらい物音立ててもばれずにすみそうっちゃすみそうだけどな。……おい、ありそうか?」
「ちょっ、ま、待てって――」
 ノエルは店の前に停まっているオープンカーの運転席を順繰りに覗いていった。
「……あ!」
「あったか?」
「おう、たぶんこのインパラの持ち主が犯人だ!」
 ノエルはファイヤーパターンの描かれたシボレーのボンネットを殴りつけて毒づいた。
 確かに、クルマそのものはだいぶガタが来ているのに、ホイールとミラー、それにハンドルはきのう納車したばかりのような新品で、おまけにひどく不釣り合いなカーステレオまで積んでいる。
「間違いないか?」
「ああ。ホイールもステレオもオレのだ! 別に名前は書いてねえけど!」
「それじゃあさっさと片づけるとするか」
 指をぽきぽきと鳴らし、ソワレはノエルに何ごとか耳打ちすると、たったひとり臆する気配もなく店の中へと入っていった。

      ◆◇◆◇◆

 大音量で垂れ流されるブリティッシュ・ロックに、タバコとアルコール、それにおそらくマリファナの臭い――。
 ジム・ヘンリーズの店に一歩足を踏み入れたソワレは、あたりを支配する不健康な空気に眉をひそめた。
 店の外観にふさわしく、薄暗い店内はお世辞に清潔とはいえず、そこにたむろしている酔客たちも、見るからにたちの悪そうな連中ばかりだった。ただ、〈ブラーズ〉のメンバーの行きつけだというのは本当のことらしく、ソワレとそう変わらない年頃の若者たちの姿も少なくなかった。
 自分を品定めするような視線を超然と受け流し、逆に店内を見回しながら、ソワレは後ろ手にドアを閉めた。
「――ちょっと聞きたいんだけど、いいかい?」
「あ?」
「ちょっと聞きたいんだけどいいかい!?」
 ジュークボックスの音に負けないように、ソワレは声を張り上げて繰り返した。
「何だてめェは?」
 キューを手にビリヤード台に寄りかかっていたスキンヘッドが、口もとににやついた笑みを浮かべて近づいてきた。年齢でいえばソワレよりふたつ3つは年上、身長では頭ひとつは大きい。いかにも腕っ節に自信のありそうなタイプだった。
「今夜は貸切なんだよ。目障りだ、消えな」
「その前にひとつ聞きたいことがあるんだけどな」
 ソワレは大男を見上げて目を細めた。
 ざっと見渡したところ、店内にいるのはカウンターの内側のバーテンを含めて全部で7人。そのうち、一番腕が立ちそうなのが目の前の大男で、ほかの連中もそれなりに場数は踏んでいるようだが、ソワレにとってはその他大勢でしかない。
 頭数を確認したソワレは、親指を立てて背後を指差した。
「――表の悪趣味なインパラ、ありゃァ誰のだい?」
 悪趣味と聞いて、スキンヘッドのタトゥーの入った頭にみしりと血管が浮き出た。どうやらこの男の愛車だったらしい。
 スキンヘッドの男が怒りに顔色を変えたのにも気づかないふりをして、ソワレは平然と続けた。
「色は最悪、おまけに4ドアだろ? 見てるだけで気分が悪くなってくるんだ。あんなモン道路沿いの駐車場に停めといたら事故が起こるぜ。さっさと中古屋に持ってけよ。……いるんだろ、アレの持ち主?」
「てめええ!」
 スキンヘッドがキューをへし折ってソワレに掴みかかってきた。怒りのあまりに血が昇り、タトゥーの柄も判らなくなるほどに頭が高潮している。
 だが、冷静さを失ったパワーファイターほど御しやすいものはない。
「はいはい」
 襟もとへ伸びてきた太い腕を身を沈めてかわし、ソワレはスキンヘッドの足を刈った。
「うお――」
 バランスを崩して前にのめりそうになったところへ、軽く背を押してやる。スキンヘッドはそのまま数歩よろめき、顔面から床に突っ込んだ。
「――ぶむ!」
「へっ……ざまァねえな」
「このガキ!!」
 それまでにやにやしながら成り行きを見守っていた男たちが、腰に手を伸ばしてスツールから飛び降りた。