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妄想 2014/06/22
……終わったなあ。

この前買ってきたVシネ版『キョウリュウジャー』をリム坊と観る。
テレビ本編が終わって、劇場版が終わって、この前『俺たち賞金稼ぎ団』を観てきて、それでこのVシネ版がリリースされて、これで本当に『キョウリュウジャー』が終わったという感じ。ここ数年、個人的には戦隊ははずれが少なくて、毎年シリーズが終わるのが惜しいと感じていたのだが、今回は特に名残惜しい。数年後、BOXが出たら買っちゃうかもしれん。
とか思っていたら、『俺たち〜』、来月にはもうソフト発売するじゃん!

そして第3回、兄登場。だいたい全10回くらいかな? 8回かも。


       ――〈03〉――


「こういうところでそんなもん振り回すとはオツムが弱いね、あんたら。お仲間をブッ叩かないようにせいぜい気をつけな!」
 腰に巻いていたチェーンを引き抜いた男を見据え、ソワレは床を蹴った。
「オラァ!」
 できそこないのオジー・オズボーンがソワレの脳天目がけてチェーンを振り降ろしたが、ソワレはそれをかわして軽やかにビリヤード台の上へと飛び、片手をついて身体を旋回させた。
「あらよっと!」
 跳馬を思わせる動きから繰り出された蹴りが、オジーの側頭部を捉えて派手に吹っ飛ばした。
「ぐがっ」
「もうちょいカラダ鍛えなよ、おにーさん!」
 軽くウインクしてビリヤード台から飛び降りたソワレは、しかし、ほかの男たちとことを構えることなく、さっさと店から逃げ出した。
「てめっ――!?」
「待ちやがれ!」
 一瞬呆気に取られていた男たちが、ビールの空き瓶やナイフを手にしてソワレを追う。
「そうそう、たまにゃ外の空気も吸ったほうがいいぜ。……ただ、足元には気をつけなよ?」
「!?」
 ソワレを追って店の外に飛び出した男たちの脛を、ドアの脇に身をひそめていたノエルが思い切り角材でひっぱたいた。
「――――」
 声にならない悲鳴をほとばしらせ、男たちがつんのめる。
「連帯責任だ! 文句があるならあのスキンヘッドにいうんだな!」
 男たちの顎や首筋に鋭い蹴りを叩き込んでまたたく間に昏倒させたソワレは、店の奥にいるバーテンがどこかに電話をかけているのを見て、手のしびれに泣きそうな顔をしているノエルを引っ張った。
「逃げるぞ、ノエル!」
「お、おう!」
「早くしろ、ふたりとも!」
 ソワレが店の中で暴れている間に、ジェイとギグジーはインパラのフロントタイヤをレッカー車のリフトに固定していた。
「――出すぞ!」
 ジェイが助手席に乗り込むのを待って、ギグジーがレッカー車のアクセルを踏み込む。
「ちょっ――ま、まだ乗ってねえよ!」
「しゃべってるヒマがあったら乗れよ!」
「おわっ!?」
 動き始めたインパラの後部座席にノエルを蹴り込むと、ソワレもまた助手席に飛び込んだ。
 レッカー移動とは思えない速さで引きずられていくインパラを、店から出てきたバーテンが、何か大声で叫びながら見送っている。ミラー越しにそれを見ていたソワレは、シートに背中を預けて深呼吸し、ノエルを振り返った。
「どうだ、ノエル?」
「……何がだよ?」
「これでおまえの愛車から盗まれたモンは全部戻ってきたぜ。ボコボコにされたボディは……そっちはまあ、このインパラをばらしてパーツ屋に売れば、多少の穴埋めにはなるんじゃねえの?」
「……その前に、バァさんの診療所に寄ってくれ」
「あン? どっかケガでもしたのか?」
「……ムチャクチャな野郎にいきなり背後から蹴り飛ばされたせいか、寝違えたみてえに首が痛ェんだよ。このぶんじゃ、あしたはマジで首が回らねえぞ」
 前後の座席の間の空間に、上下さかさまにひっくり返った状態ではまり込んでしまったノエルが、呑気に笑うソワレをじろりと睨みつけた。

      ◆◇◆◇◆

 受話器を置き、フェイトは大袈裟な溜息をついた。
「――どうしたって、あの子たち?」
 カウンターに戻ってきたフェイトの前に、シャーリィがビールのグラスを置く。すでにデュードとギャラガーの姿はなく、照明を暗く落とされた店の中には、フェイトとシャーリィしかいない。
「ノエルが首の筋を違えただけで、あとはみんな無事だそうだ」
「よかったじゃない」
「……いいもんか」
 グラスの半分ほどを一気に干したフェイトは、珍しく渋い表情で舌打ちしている。
「〈ブラーズ〉の後ろには“ファミリー”がいる。もしこれをきっかけに、ギャング同士の抗争が激化でもしたら――」
「そうしないために、あなたみたいな大人がいるんじゃないの?」
「それをいうなら、まずあんたがソワレたちを止めてくれてもよかったんじゃないのか? それをあんたは、逆にソワレたちをあおるようなことをいったらしいな?」
 フェイトが眉をひそめてじろりと睨んだが、シャーリィは薄い笑みを崩そうとはしない。
「なら聞くけど、殴られてもおとなしくしてさえいれば、向こうはそのうち友好的になってくれるのかしら?」
「そうはいわない。だが、報復合戦が横行するようになれば、ようやく落ち着きを取り戻し始めた街が、また騒然としてくる」
 そうなれば、ことは〈サンズ・オブ・フェイト〉と〈ブラーズ〉だけの問題ではない。この街に住むすべての人々が、多かれ少なかれ迷惑をこうむることになるだろう。
 シャーリィはタバコに火をつけ、白い煙をくゆらせた。
「もし――“ファミリー”の人間が、チャンスの愛車に同じことをしたら、あなたならどうする?」
「…………」
 今はもうこの街にいない親友の名を聞いて、フェイトは眉間にしわを寄せた。
「俺がどうこうするまでもないさ。あいつなら、自分のことは自分で始末をつける」
「でも、そうと判っていても、あなたならチャンスより先に動いていたんじゃない? 昔のあなたは、リーダーである自分の立場もわきまえずに、仲間のために率先して動く男だったって聞いてるけど」
「それは……もう何年も前の話だ」
「いい傾向だわ。つまり、今のあなたにはリーダーとしての自覚があるということよね」
「からかわないでくれ」
 フェイトはビールを飲み干して苦笑した。
「そうやって昔のことを持ち出されると、俺も反論のしようがないな。……確かにあんたのいう通りかもしれない」
「でしょ? 若い頃のあなたを見て育った子たちに、あれこれ説教しても無駄よ、無駄。だったら腹をくくって、やんちゃ坊主どもの尻拭いでも考えることね」
「さすがに苦労人は達観してるな」
 ポケットから抜き出した数枚の紙幣をカウンターに置き、その上に空になったグラスを乗せて、フェイトはスツールを降りた。
「ビール一杯の代金にしては多すぎるわ。チップでもくれたつもり?」
「どうせあいつらのことだ、ツケが溜まってるんじゃないのか?」
「あの子たちの代わりに払ってくれるわけ? でも残念ね。だとしたら、逆にこれっぽっちじゃ足りないわ」
「……今度あいつらが来たら、アルバを見習ってもう少し真面目にはたらけといっておいてくれ」
 年上の女友達に軽く手を振り、フェイトは店を出ていった。

      ◆◇◆◇◆

 もう日も暮れようかという頃になって、ソワレはのっそりとベッドから身を起こした。ドライヤーの音がしなかったら、星がちらつき始めてもまだ寝ていたかもしれない。
 大学での勉強を終えてアパートに戻ってきたアルバが、今また身だしなみをととのえているのは、これからバイトに出かけるからだった。
 平日は朝早くから夕方まで大学に通い、そのあとは深夜までバイト。帰宅後には勉強や読書をして、次の日にはまた大学へ――とてもストイックな生活サイクルだとソワレは思う。たとえこの半分の密度のスケジュールでも、ソワレでは3日と続くまい。
「……兄貴の生真面目さは一種の才能だな、こりゃ――」
 寝癖のついた頭をかき回しながら呟くと、ちょうど洗面所から出てきたアルバがそれを聞きつけたのか、怪訝そうに首をかしげた。
「何かいったか、ソワレ?」
「別に」
 ベッドを飛び降りて大きく伸びをし、冷蔵庫の中をあさる。
 ミネラルウォーターで喉を潤す弟に、アルバがネクタイを締めながら尋ねた。
「――みんなの様子はどうだ、最近?」
「相変わらずだよ。バカばっかやってさ」
「それが楽しいんだろう?」
「まあね」
 口もとを大雑把にぬぐって苦笑したソワレは、ふと思い出したように聞き返した。
「――そういや兄貴は、最近はぜんぜんフェイトたちとは連絡取ってねえのか?」
「ああ」
「まさかとは思うけどよ……兄貴、このままフェイトたちと縁を切るなんてことは――」
「いつかは戻るさ」
 どこに――とはいわなかったが、仲間たちのもとへ戻るという意味だということは、ソワレにも判った。
「ただ、それまでにいろいろと学ばなければならないことがある。今はそういう時間だというだけさ」
「……ガッコに行ってねェオレたちにゃ耳の痛ぇハナシだな」
「学校で学ぶことだけがすべてとはかぎらない。おまえはおまえで、ストリートでしか学べないことを学べばいい。……だいたい、私たちはふたりいるのに、ふたりともまったく同じことしか学ばないのでは面白くないだろう?」
「そりゃそうだ。……ってか、オレが兄貴と同じことを勉強しようったって、そもそもモチベーションが維持できねえよ」
「ならそれでいいんじゃないか? 適材適所さ」
 アルバはソワレに軽くウインクしてバイトに出かけた。
 それからだらだらと身支度をととのえ、ソワレもアパートを出た。