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妄想 2015/09/28
『水滸伝』の話。

100人以上も好漢がいると、中にはアピールポイントが腕っぷしじゃないヤツもいる。こんなふうにいうと頭脳派キャラがいるような錯覚を覚えるが、基本、『水滸伝』には頭のいいキャラは登場しない。ズルいヤツはたくさん出てくるが、頭がいいキャラはいない(断言)。
一応、軍師役の呉先生がいるが、この人はぱっと見はスゴい策を立案したように見えるがよく考えると穴だらけだったとか、敵将を捕らえる場合は挑発→逃走→追いかけてきたところを落とし穴に落とす、とか、本当に穴だらけの雑な軍師で、「仰々しい集団で移動したら賊の目につきやすいから、少人数で裏道から素早く移動しよう!」と上司に献策した楊志のほうが頭がよく見えるレベル。
そんな感じなので、ならば腕力と頭のほかに何をアピールするのかというと、金や女への執着心のなさであり、このへんが現代のJKからキモいといわれるゆえんでもある。
特に腕も立たない頭も回らない筆頭格の宋江さまの場合、真っ先に出てくるフレーズが、「財をうとんじ義を重んじる」というやつで、つまりはお金に執着せず、むしろ気前よく人にほどこしをあたえ、義理を通すことを何よりも大事にする、というような意味である。
ところが宋江さまは、しがない県の押司(現代日本だと市役所の中間管理職?)。当時は役人が賄賂を受け取るのが当たり前の社会とはいえ、好漢である宋江さまは民衆から賄賂なんか受け取らない。むしろ旦那に先立たれたのに葬式が出せないババアにぽんと棺桶代を出してやるくらいの気前のよさで、どう考えても役人としての収入よりも好漢としてばらまく支出のほうがはるかに多い。
にもかかわらず、宋江さまが破産せずにやっていけるのは、実は実家が地方の大名主だからなのである。要は自分で稼いだ金をばらまいているわけではなく、完全に実家の経済力のおかげ(しかも実家を切り盛りしているのは、老いた父親と弟)。

地方都市の市役所でうだつの上がらない中間管理職をしている30だか40だかのオッサンが、田舎の土地持ちの実家からいまだに数十万単位の仕送りをもらっていて、それを気前よくばらまいて不良警官やチンピラどもに「兄貴!」と祭り上げられているという……。現代人の感覚からすると、「それ、おだてられて単に金蔓にされてるだけじゃ?」という気もするのだが、実際、これで宋江さまは全国津々浦々まで、天下一の好漢として名が通っているのである。
そのへんの中国的な侠客の精神構造は今ひとつ理解しがたいのだが、もっと単純に納得がいかないのは、宋江さまがやっていることを、その何倍もの規模でやっている好漢がほかにもいるのに、それでもなお宋江のほうが彼らより上に来るという点であろう。