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妄想 2006/03/20
きょうは朝からネムネムとリムリムが激しく衝突していた。

それをおもんぱかってというわけではないのだが、夕食を作ろうと思ったらロクな食材がなかったので、買い物ついでに、リムリムと食事に出かける。
はたで見るかぎり、リムリムは朝の大喧嘩を引きずってはいないようだ。
どう見てもありゃあきみのほうに非があるだろ。少しは反省してんのか、あァン?
とか口にしそうになったが、まあ、切り替えの早さは彼女の長所のひとつでもあるので、きょうのところはよしとしよう。

夕食といってもふたりだけだし、ガツガツ食べるつもりもなかったので、この前リムリムと散歩中に立ち寄ろうとしたら人がいっぱいで入れず悔しい思いをした、井の頭公園近くの和風喫茶、「花仙堂」へ。
ここでつるつるとパスタなど食べながら、ぼくはずっと気になっていたことをあらためて尋ねてみた。
「そういや、結局きみのクラスでは、ホワイトデーに勇気を振り絞った男子は何人ほどいたのかね?」
「ゼロ」
「は? ゼロ? 誰も女の子にお返ししなかったわけか?」
「うん」
「でもあれだろう、確かきみのクラスには、みんなが公認しているというか、人目もはばからずにいちゃいちゃしているカップルがいるという話ではなかったか?」
「ああ、RくんとMちゃんね」
「そう、そいつら。そのふたりはさすがにチョコだの何だのをやり取りしていたのだろう?」
「さあ? 少なくともみんなに見えるところではしてなかったけど」
「そりゃあつまらんなあ」
「まあいいのよ、あのふたりは。ヒマさえあればいつもいっしょにいるんだし、いまさらそういうイベントとかしなくたってさ」
「そういう甘酸っぱい青春時代の思い出をはるか遠い過去に置いてきてしまったぼくからすると、そこまでべたべたしていてなぜ周囲の人間に冷やかされないのか、不思議でしょうがないのだが……」
「最初はすっごい冷やかされてたよ。で、Mちゃんがみんなの前で大号泣しちゃって、それ以来、誰もからかわなくなったっていうか、黙って見守るようになったんだけど」
「へえ。……でも、だったら堂々と何かプレゼントしたってよさそうなものだと思うけどな。もしかして、すでに倦怠期に入った夫婦みたいな仲になって、いまさらプレゼントなんてバカらしいと思ってるんじゃないの、ふたりとも」
「おいおい」
珍しくぼくの発言にツッコミを入れてきたリムリム。
彼女の前には食後のデザートの巨大なチーズケーキが置かれている。別腹、という概念が実在することをまざまざと見せつけられた瞬間。

「で、きみはどうなのかね?」
珈琲ソフトクリーム――おそらく正式にはアフォガード・ジェラート・コン・カフェというのだろうが、とにかくそれをなめながら、ぼくはついでに尋ねてみた。
「ん? ナニが?」
「きみは好きな男の子とかいないのかね?」
「ヤダな〜、いないよ、そんなの〜」
困ったように笑うリムリム。
確かにリムリムは、先日のバレンタインにも友チョコしか用意せず、しかもそれを買うのにお金が足りなくなって、慌ててぼくに半額出してもらった挙句、いまだにその金を返すことなく今またこうしてぼくの奢りでケーキをむさぼっているような小娘だ。
ホワイトデーにお返しをもらったといって家に持ち帰ってきたものが、ことごとく女の子の友達からのクッキーやら何やらだったことを思えば、たぶんまだ、そういう方面には臆病というか、晩生なのだろう。
クラスの女子の中では一番声が大きい(=目立ちたがり)だろうに、妙なところでしおらしい。

が、それでもぼくとネムネムは、以前から、そんなリムリムにも好きな男の子がいるのではないかということをうすうす感じていた。
クラスで一番の美少年といわれているKくんだ。
そこでぼくはいった。
「ぶっちゃけ、きみはクラスの男子で誰が一番好きなわけ?」
あまりにもダイレクトな問いかけだが、こういう聞き方をしないとボク少女のリムリムには通じないかもしれないと思い、あえてそう尋ねてみたところ、リムリムはフォーク片手に身体をくねくねさせ(一応照れの表現らしい。まるで『ぶつ森』のけだものの焦りの表現のようだ)、
「え〜? どうしてそんなこと聞くのよ〜?(くねくね)」
「いいからいえ。この前チョコ買う時にお金を半分出してやったのは誰だと思っている?」
「え〜?(くねくね)」
「え〜? じゃねえ。さっさと吐け」
「いや〜、だって、好きな男の子なんか特にいないしさ〜(くねくね)」
あくまでシラを切り通そうとするボク少女。
「じゃあ、クラスの男子の中で誰と一番仲がいいんだ? 男の子の友達が多いと聞いているが」
「えっと〜……まあ、いろいろといっしょにバカやるのはTくんかなあ……」
「つまり、一番好きなのがTくんなんだな」
「違うよ、仲がいいだけだよ。好きとかいうのとは違うっていうか――」
「だが、この先もずっと仲よくしていたいんだろう、そのTくんとは? クラスの誰よりも、自分が一番仲よくしていたいんだよな?」
「うーん……そう、なのかなあ……」
「じゃあそういうことだろう」
「まあ、一番はTくんかなあ……」
フォークを口の端にくわえたまま、ちょっと顔を赤くしてうなずくリムリム。
ところがこの小娘、よせばいいのに、
「――うん、少なくともKくんじゃないよ。ほんと、Kじゃないから」

誰もKくんの名前なんか出していないのに、わざわざ取ってつけたようにそういうことをいうから、きみの本命が誰だかバレバレだっていってるんだよ。