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妄想 2006/04/08
カポエラ……。

仕事がひと山越えたというネムネムが、夕食は何かおいしいものが食べたいといい出した。
どういうことだ、それは? まるでいつもはおいしいものを食べていないみたいなセリフではないか。

自慢じゃないが、ぼくはここ半年ほど、外に仕事に出るネムネムのために毎日お弁当を作っている。野菜不足にならないようにいろいろと考えて、せっせとお弁当箱におかずを詰め、白いご飯は芸がないのでかならず混ぜご飯を作り、毎日持たせてやっているのだ。

それをこの女は、たまにはおいしいものが食べたいとかぬかしやがった。
自分が人間ドックでオールA判定が出るほどの健康を維持できているのは、いったい誰のおかげだと思っているのか。
仕事の関係上、ネムネムはどうしても不規則な生活サイクルになりがちで、本来なら不健康な方向へとエントロピーが増大してしかるべきはずのところを、ぼくが作る食事やお弁当でそうならずにすんでいるのではないのか。
だいたい、ネムネムという女はどうしようもなく――。

「あれ? どうしたの、うれうれ? 拳なんか握り締めちゃって?」
「……いや、別に」
思えばぼくだって、ネムネムやリムリムが休んでいる日に、律儀にフライパンを振ってやる必要はない。ここは考え方を少し変えて、ぼくがおさんどんから解放されるチャンスだと思えば腹も立たない。
「で、何を食べたいというのかね?」
「ちょっとスパイシーなカンジのがいいわね」
「それをいったら、この前インドカレーを食べたばかりなのでは?」
「うーん……きょうはメキシコ料理の気分なんだけど――」
そういって、この前出た『Hanako』をめくるネムネム。
「ぼく的にはタイ料理かな。『アムリタ食堂』の桜のプリンがおいしいんだよ。プリンといいつつほとんどババロアなんだけど。――それにこの店、地下にスタジオがあって、そこでカポエラ教室とかやってるし。カポエラだよ、カポエラ!」
「じゃあ習いにいけば」
どうやらハイエナには興味があってもソワレにはあまり興味がなかったらしく、ネムネムはカポエラという魅惑のキーワードを軽く流し、立ち上がった。
「決まったわ」

30分後。
ぼくたちは行きつけのイタリアンレストランではまぐりの白ワイン蒸しを食べていた。
「…………」
「何かいいたいことでもあるの、うれうれ?」
「……メキシコ料理気分とかいうのはどこへ消えたのかね?」
「いや、だってよく考えたら、わたし、メキシコ料理なんてジャンバラヤとトルティーヤしか知らないし、ふと気づいたらバルバレスコが飲みたくなってたから」

そう思うのならこの店の勘定はきみが持て