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妄想 2005/09/30

野郎、やりやがった!

朝、食後のひと時に、お茶を飲みつつレッツプレイ。
最近ぼくがちょっとしたヒマを見つけて遊んでいるのはこのゲームである。

カーファイ

続編がDSで発売されることになった、NGP版『カードファイターズ2』。
ネムネムやリムリムにいわせると、
「何なの、その大きなゲームボーイ?」
ということになるらしいが、
「これでも発売当時は業界最高スペックを誇る携帯ゲーム機だったんだよ!」
といいたいところをぐっとこらえて黙々とプレイ。
まあ、7年も前のハナシである。一般人の婦女子がネオポケを知らずとも仕方のないところであろう。

そこへ、リムリムがげほげほいいながら起きてきた。
「やっぱり風邪なんじゃないかね、きみ?」
ぼくが渋い顔でいうと、リムリムは首を振って否定した。
「大丈夫大丈夫、いつものことだし」
確かに喘息持ちのリムリムはわりと咳き込むことが多いが、

弱げほげほ×2>強げほげほ>キャンセルはくしょん>追い討ちずずー

というよどみのないコンビネーションは、どう見ても風邪、もしくは風邪の前兆だ。
このまま学校に行かせていいものかと思案するぼくをよそに、リムリムはあくまで大丈夫だと主張し、朝食を残して出かけていった。

と思ったら、昼すぎには微熱があるといって早退してきて、それっきり寝込んでしまった。
実は7月に風邪をひいた時も、今回とほとんど同じパターンだった。
風邪をひき始めていることにぼくが気づいてあれこれ忠告してやっているのに、それをことごとくスルーし、熱を出して寝込む。
体調管理が杜撰すぎるという意味では自業自得なので、ぼくは同情しない。

さて、夕食後のひと時に、お茶を飲みつつ――。

某こふ2

ああっ!? 『CF2』がいつの間にか『某こふ2』に!

妄想 2005/09/28
「プリキュア! プリキュアまだ入らないの!?」

コンビニで買い物をしていたら聞こえてきた、なかなか衝撃的なこのセリフ。
ふと見ると、食玩コーナーを前に、なかなか恰幅のいい御仁が、バイトのあんちゃんを呼びつけてそんなことを尋ねている。
「あるだけ全部買い占めたのにコレとコレが出なかった! 次は箱で買うから早く入れろ!」
などとムチャな注文をつけて一般人のバイトくんを困らせている痛い人か? と思ってさりげなく耳をそばだててみると、どうやらそこのコンビニの経営者風のおじさんが、バイトくんに次の入荷予定を聞いていただけらしい。
……ただ、棚が空いてる部分はほかにもあるのに、どうして真っ先にプリキュアなの?
まあ、ぼくはプリキュアの食玩なんかにはあんまり興味ないのだが。

そんなこんなでパディントンの食玩を買って家に帰ると、また不穏な咳をしている。
肺病病みのニヒルな美剣士ではなく、リムリムが、である。

急に冷え込んできたせいか、このところ、リムリムはよく咳き込んだりくしゃみをしたりするようになった。もともとリムリムは、幼い頃から喘息持ちで、それでも昔とくらべたらずいぶんマシにはなってきているのだろうけど、今もときおり発作を起こして寝込んだりする。
よく判らないが、喘息の発作というのは気圧の変化によって引き起こされることがあるらしく、台風が多く発生するこの時期は、彼女にとってはなかなかツラいものがあるのだろう。
そこに風邪が加わったりするともうダメだ。

ぜーぜー、ごほんごほん、くしゃんくしゃん、げふげふげふ、ずずー。

苦しそうにそんなことをいっている本人はもちろん可哀相なのだが、何より可哀相なのはこのぼくだ。このぼくが一番可哀相なのだ!

どういったカラクリになっているのかは不明だが、ネムネムやリムリムといっしょに暮らし始めてからこっち、ぼくはまったく風邪をひかなくなった。以前なら、「あー、喉が痛い。これはあさってあたり来るなー」と、前兆が来ればかならず数日後には熱が出たものだが、もっぱら最近は、「あー、喉痛い。でもココ止まりだなー」と、喉の痛み程度ですんでしまう。
だが、リムリムはそうはいかない。
咳とくしゃみを連発し始めると、数日後には高熱を発して寝込む。こっちの仕事が忙しいこの時期に寝込んでくれるなよ、というぼくの淡い期待をばっさり裏切り、高確率で寝込む。
「きみ、風邪のひき始めっぽいから、きちんとごはん食べてあったかくして早めに寝なよ?」
「だいじょぶだいじょぶ!」
そういって空元気を発揮した翌日に、38度くらいの熱を出してくれやがる。
普段から自分の健康管理をおろそかにしているリムリムが風邪をひくのはなかば自業自得だが、その世話をするはめになるぼくは本当に可哀相だ。

きのう会社から帰ってきたネムネムも、喉が痛いといっていた。
きみら、ひょっとして週末にふたり揃って倒れる気か?

『Mi:2』日記05 2005/09/27
日本では『KOF MAXIMUM IMPACT』の攻略本が発売されていないので、後学のために英語版の攻略本を買ってみた。
といっても、英語がすらすら読めるわけではないので、技表なんかを眺めるのがもっぱらなのだが、日本語の技名と英語の技名のギャップにちょっと苦笑させられる。
「外式・百合折り」→「GAISHIKI 100 SLASHES」とか。100って何だ、100って。
「百」という漢字が入っていたので、とりあえず100 SLASHESと名づけてみました、みたいな空気がぷんぷんするのだが、実際のところ、こういったローカライズの過程で必殺技の名前を日本語→英語にするのは誰の仕事なのだろう? SNKの社内でやったにしては、いろいろとスゴいのがほかにも目につくのだが。
「MAX VERSION URA 108 SHIKI KUSANAGI SERPENT」、これは長すぎ。
「ORICHI-NAGI」でいいじゃん。

とまあ前置きはこのくらいで。
前回の話はこちら。以下、続き。

とにかく、某こふの仕事の時にいろいろとあって、ぼくは会社の外からやってきてシナリオ作りにかかわることの難しさ――いい方を変えればもどかしさということになるのか、とにかくそういう自由度の低さをすでに思い知ったあとだった。
ぼくがどんなにああしたいこうしたいといってみても、制作会社のスタッフがNGを出したらそれは通らない。ままならないことばかりでストレスが溜まるだけの仕事なら、いっそやらないほうがマシだった。

だからぼくは、本家SNKから打診されたオファーに対して、即答はしなかった。
本当はやりたいのだが、過去の苦い経験がぼくをためらわせていた。
するとKさんは、
「とにかく、詳しい内容や条件について、もう少し詰めたいと思うんですわ。近々こちらにいらっしゃいませんか?」
SNKの人がこちらといえば大阪に決まっている。秋葉原にも東京支社があるのは知っているが、あくまでSNKの本拠地は大阪だ。この10年で激しくアップダウンを繰り返しながらも、SNKの本社は今も大阪府吹田市、江坂駅前の繁華街にある。
個人的に大阪は好きなので、行くこと自体はやぶさかではない。というより、ぼくの大阪原体験はSNK&ネオジオとともに始まった。懐古趣味的な意味もあるが、ぼくはあの街が好きだから、来いといわれれば大喜びで行きたいところではある。
が、いかんせん、当時はスケジュール的にきつかった。やると決めた仕事なら時間を取って出かけもするが、まだ引き受けるかどうかも判らない段階だ。
どうしたものかとカレンダーをめくって、その時ぼくは、ふと重大なことに気づいた。

つづく。

妄想 2005/09/26
ガハァ! を吐いた!

ではなく、血を噴いたお話。
今年は5年に一度の国勢調査の年のようで、ウチにも先日、調査票が届けられた。これはその時に起こった出来事である。

「○野さ〜ん、○野さ〜ん」
ネムネムとリムリムが揃って友人宅に遊びにいっていたある夜、ひとりで仕事をしていると、どこか遠くからぼくの本名を呼ぶ声がする。不審に思って玄関を出てみると、どうやら門の外に誰かいるらしい。
「はい?」
門を開けて表の通りを確認したところ、ママチャリでやってきたとおぼしいおばちゃんがいた。暗がりでよくは見えなかったが、少なくともぼくの知り合いではない。
「ああ、○野さん、よかった」
留守だと思って帰ろうとしていたところだったのか、ぼくが顔を出すと、おばちゃんはあからさまにほっとしたような声でそういった。
どちらさまで? とぼくが尋ねるより早く、おばちゃんは我が家への訪問の意図を述べ始めた。
「今年は国勢調査の年に当たってますでしょう? それで、こちらの調査票を書いていただくことになって――」

ずるっ!

その時、妙な水音とともにおばちゃんのセリフが途切れた。
「あ、あらやだ、は、鼻が――」
鼻声で気恥ずかしそうに続けるおばちゃん。何しろ街灯の明かりから遠いおかげであたりは薄暗く、ぼくにもよく周りが見えていなかったのだが、おばちゃんは慌ててずるずると鼻をすすり出し、
「あれっ? どうしてかしら? あらあら?」
とかいいながら、ウチに配る予定の調査票をママチャリのカゴに放り込み、荷物の中をまさぐっている。
最初はぼくも、「不意討ちで鼻水でも垂れてきちゃったのかしらん?」などと気楽に考えていたのだが、おばちゃんの狼狽振りを見ていると、どうもそうではないらしい。
いったい何がきっかけになったのかいまだもって不明だが、驚いたことにこのおばちゃん、いきなり派手に鼻血を噴いたのである。暗がりの中でも、おばちゃんの鼻の下あたりが黒く染まっているのがうっすらと見えた。
しばらくバッグの中を探っていたおばちゃんは、やがてヘンに情けない声でぼくにいった。
「すっ、すいません、○野さん、チリ紙いただけないかしら?」
「あ、はい」
ぼくが家の中からチリ紙を持って戻ってくると、おばちゃんはそれで鼻のあたりをぬぐい、ほっとしつつもどこか引きつった笑顔を浮かべて礼を述べ、何ごともなかったかのように調査票についての説明を始めた。

間近に見たおばちゃんの顔には、鼻の下から唇を縦断して顎の先まで、うっすらと血の跡がついていた。こういっては悪いが、かなり滑稽なペインティングである。
そんな顔をしながらいたって真面目そうに説明しているもんだから、こっちとしては笑いをこらえるのに必死だった。

そのインパクトがあまりに強すぎたおかげで、ウチみたいな特殊な世帯の場合の記入方法を聞くのを忘れてしまった。

くそう、何もかもあの鼻血のせいだ。

『Mi:2』日記04 2005/09/25
前回の話はこちら。以下、続き。

これまでに、ぼくは2度ほどこふの名前を冠したゲームの製作にかかわったことがある。
具体名は書かない。
具体名は書かないが、

よその会社が版権を借りて有名携帯ゲーム機用に作ったこふ

といえば、熱心なファンの人にはだいたい判ってもらえるだろう。
いろいろと物議をかもしたアレである。
その製作過程でぼくが体験したいろいろなできごとが、要するにぼくにとっての忌まわしい悪夢なのである。
アレはアレで、ぼくにとっては非常に貴重な体験ではあったが、かならずしもそのすべてがいい記憶となって残っているわけではない。
アレを作っている時に何があったのか――それについてここで具体的に述べてしまうのは、いやしくも職業欄に文筆業と書いているプロの人間としてはあまりにも危険というか、軽率というか、大人気ないことなので、詳細は伏せておくことにする。
書けばどうやったって悪口になってしまうだろうし、迂闊なことを書いて、当事者からヘンにうったえられてもバカらしい。

ただ、あの2作品について――特に1本目について弁解させてもらえるなら――ぼくの立場は、

やる気マンマンでマウンドに向かったら、実は自分は先発ではなくリリーフで、すでに負けが見えている状況での敗戦処理役としか思えない起用法をされた上に、ベンチからのサイン通りに投げてとりあえず無難に試合を終わらせたあとで、途中経過をいっさい知らない一部のファンたちから、『おまえのせいでこんな大敗をしたんだ!』と理不尽なブーイングを浴びせられる移籍直後のピッチャー

みたいな感じだった。
うまいたとえでなくて申し訳ないが。

そういうことになった原因はといえば、それはやはり、ぼくはあくまで外注のスタッフのひとりにすぎず、ゲーム制作会社からすれば、ぼくが提出したものをどう料理しようが、規定のギャラさえ払えば彼らの自由なのだ、ということに尽きると思う。

だから、ひょっとしたら今回も同じような目に遭うかもしれない――と、ぼくは危惧していた。

つづく。

現実 2005/09/23
ルイーゼはディズィーじゃないし、ナガセだってまりんじゃないんだよ! ちょこっといじってみればすぐに判るって!
いや、かくいうぼくもまだいじったことはないんだけど、でもホントに違うんだよ! 助けて、デカユサ!

どうもみなさんこんにちは、嬉野秋彦です。
あれから1週間ほどがたち、祭りの興奮もようやく冷めてきたのか、あちこちのサイト上にTGS2005の感想なぞがアップされ始めてますね。ぼくは初日と3日目に行って、ほぼすべての時間をSNKのブースですごしていたわけですが、仕事でかかわっているということもあり、やはり気になるのは『Mi:2』&アニメ版こふの評判です。

あちこちのサイトさんを巡回してみた感じ、アニメに関しては、おおむねファンのみなさんに喜んでいただけているようです。まあ、作画的にはケチがつけられないレベルなわけで(これでダメならどこに頼めと?)、この反応もある程度は予想できていたことですけどね。
声を当てた声優さんたちにとっても、あのデキはかなり衝撃的だったらしく、トークショウでは庵役の安井邦彦さんが、しきりに「すばらしい!」を連呼してました。そういやアフレコの時にも、庵の収録はかなり早い段階で終わったのに、安井さんはそのあとも残って庵の出てないパートの映像とか熱心に見てたっけ。
このショートアニメ、11月頃から1話ずつ、Web上で配信されていく予定らしいですが、もしかすると、昨年もあった年末の某イベントで……ごほんごほん。

一方の『Mi:2』のほうも、映像のみの出展だったわりには、あちこちでそれなりに話題にはなってるみたいで喜ばしいかぎりです。
やっぱり会場前のバナーがインパクト強かったんでしょうかねえ?
個人的には、もうちょっといろんなキャラを見せられればよかったかなと思うんですけど、それはぼくが決めることじゃないし、この段階で見せすぎるのも、ねえ?

というわけで(え?)、『ザ・キング・オブ・ファイターズ完全読本』。
ぼくは付録のドラマCDの仕事しかしてませんが、こういうものも出ている、ということで。

『Mi:2』日記03 2005/09/20
前回の話はこちら。以下、続き。

SNKが3Dのゲームに手を出すのは、実は『Mi』が初めてではない。
対戦格闘ゲームにかぎっていえば、過去に業務用と家庭用を合わせて5タイトルほどリリースした実績がある。
が、正直いって成功していたとはいいがたい
完全なSNK信者であるぼくの目から見ても、あれは失敗だった。
具体的な売り上げがどうだったかは知らないが、ゲームの出来としては、お世辞にも傑作とはいえないだろう(ストーリー込みでぼくは好きだが)。それも、もとは2Dで人気のあった『餓狼』や『サムスピ』をわざわざ3D化して、そして見事にコケたのである。旧SNKが倒産した遠因のひとつといってもいいすぎではないだろう。
製作スタッフのかたがたもがんばっていたとは思う。ただ、ユーザーはその過程ではなく結果しか評価しない。アーケードにしろコンシューマーにしろ、タダで遊べるわけではないから、その声もシビアだ。あの頃はみんな、SNKは3Dをやるべきじゃないといっていた。
ぼくもそう思った。
世間でいかに3D格闘が主流になりつつあっても、SNKは2Dを作り続けるべきだと。

だからKさんからのオファーがあった時、ぼくは3Dの『Mi』でも同じ思いを味わうんじゃないかと危惧していた。

とはいうものの、公式サイトで紹介されている3Dのキャラはけっこういいカンジで、これがスピーディにきちんと動いてくれるのなら、それはそれでいいのではないかと思えた。
2Dの本家こふと同じものを求めるのはそもそも間違いだが、3Dの『Mi』には『Mi』なりの面白さを期待していいんじゃないかと、ムービーを見てそう思えてきた。

しかし、かつてぼくが見た悪夢はもうひとつあった。
実をいうと、もうひとつの悪夢のほうが、ぼくにとってはより身近で、そしてさらに忌まわしいものだった。

つづく。

妄想 2005/09/18
まったくおとなげない。

ゲームショウのセガブースでもらってきた作品紹介DVDを見ていたら、ギャルゲーやボブゲの紹介映像の時にかぎって、ぼくの背後でBGMに合わせてヘンな踊りを踊るネムネム。
「……きみ、そんなにこの手のゲームが嫌いかね?」
「別に嫌いじゃないんだけど、ただなんとなく」
「いいからきみは早く着替えなさい。きょうはリムリムとふたりで出かけるんだろう?」
「まあね〜♪」

そういうわけで、初日のビジネスデーに続き、きょうはぼくもゲームショウへ。といっても、ファミリーデーにおこなわれる各社ブースでのイベントなどには特に興味はないので、まずはお世話になっているSNKのみなさんにご挨拶。
ついでに1枚ぱちり。

ながるー

こちらのふたりは、ぼくがお手伝いしている『KOF MAXIMUM IMPACT 2』に登場する新キャラ、ナガセ(左)とルー。

一般公開日のきょうのSNKブースは、ビジネスデーにはいなかったコスプレイヤーさんが多く、ファンとしては非常に目の保養になった。
やはり京や不知火舞、麻宮アテナといった定番キャラのコスプレが目についたが、中には『Mi』バージョンのアテナの2Pモデルや『武力』の西園寺貴人(の2Pモデル)、さらには某こふの黒咲壬羽なんてマイナーどころもちらほらと。
情報の露出を極力抑えているため、『Mi:2』のキャラのコスプレをしてくれている人はまだほとんどいなかったが、そんな中、はやばやと草薙京の『Mi:2』用の新コスチュームでキメてくれている子がいたのは嬉しかった。
「やっぱりレイヤーさんがいるとはなやかでいいですねえ」
ぼくがそんなことをいっていると、SNKのエラい人が不意に、
「それはそうと嬉野さん、ステージに上がりませんか?」
「は?」
「ゲーム大会の決勝戦の時にですね、『Mi:2』の映像を流して、ウチのプロデューサーのFALCOONに挨拶させる時間を作ろうと思ってるんです。せっかくいらしたんですから、嬉野さんも、その時にぜひごいっしょに」
ぼくの仕事は字を書くことであって、人前でしゃべることではない。実際、先日のエンターブレインのパーティの時にも、選考委員として慣れない挨拶なぞしてアガりまくっていたぼくだ。100人やそこらの人間の前でしゃべるだけであれだけ緊張するのに、こんな大勢のファンの前でマトモにしゃべれるはずがない。
……と思ったのだが、なんだか断れる雰囲気ではなかったし、テキトーにFALCOON氏の言葉に相槌を打っておけば何とかなると思ったので、あとさき考えずに承諾してしまった。

その後、会場内をテキトーにぶらついたり、ヤケに高いカツカレーを食べたり、お茶を飲んだり、そのへんに座り込んで『Mi:3』の登場キャラを考えたり(え?)していたぼくだったが、約束の時間になって控え室に行ってみると、急転直下の事態が発生。
なんと、各種イベントの時間が少しずつ押していて、一番最後のゲーム大会の決勝にそのしわ寄せが来た結果、FALCOON氏の出番がカットされたという。当然、そのオマケでステージに上がるはずだったぼくの出番もカット。
「ほんっとーに申し訳ありません!」
と、スタッフのかたがたに謝られてしまったが、冷静になって考えてみれば、やはりぼくはあのステージに上がらなくてよかったのだと思う。緊張のあまり、「『Mi:2』にはあのキャラとあのキャラが出ます」とか、「実はラストでこうなるんです」とか、ミもフタもなさすぎる爆弾発言をかましてしまうよりはいいだろう。

結局、そのお詫びというわけではないが、ぼくは紙袋にいっぱいのおみやげをもらって家路についた。
夜、ネムネムとリムリムが、それぞれがきょう買った帽子や服を「いいでしょ?」とかぼくに自慢していたが、何をいっているんだ、きみたちは?
そんなものより、舞&アテナのピンキーのほうがいいに決まってるだろう!

ところでSNKブースの一角に飾られていた、『KOF完全読本』のカバーにも使われているこのイラスト、

全員集合

こふシリーズに登場したキャラクターのほぼ全員が一堂に介しているんだけど、ごく一部のキャラだけがいないのはなぜ?

……やっぱり権利関係が不透明なままだから?

『Mi:2』日記02 2005/09/17
きのうも書いたが、ゲームショウでさりげなく発表されたので、そろそろぼくがこふのことを書いても許されるのではないかと思う。

こふ――とはKOF、すなわち『THE KING OF FIGHTERS』の略である。
こふに関しては、デビューして間もない頃から、これまでにトータルで10冊ほどノベライズしてきている。著作が100冊ある中の10冊だから、かなりの割合だ。ぼくのこふ好きが顕著に出ている部分といっていい。
ただし、ぼくがここに書き込んでいこうと思っているのは、これまでやってきたノベライズに関する話題ではなく、ゲームのほうのこふのハナシだ。
今回のものも含め、以降、この手の書き込みについては、ほぼ100パーセント、そっちの熱心なファンだけをターゲットにしているので、ぼくのオリジナル小説しか読まないという人や、ゲームに興味がない人にとっては、今ひとつ面白くないかもしれない。というかそれ以前に、ワケの判らない単語やキャラ名ばかりが飛び交って、ホントにワケが判らないはずだ。
でも、これに関しては完全にぼくの嗜好の問題だし、ゲームのほうのアピールも含めてのことなので、理解できない人にはすいませんとしかいいようがない。
ここでは少なくとも、ぼくはぼくが書きたいことだけを書く。
少しずつ不定期に書き込んでいくつもりだが、なにぶん、今現在リアルタイムで進行していることもあるので、場合によってはボカした表現になることもあろうし、トータルで見ればかなり長い話になると思う。
それをご了承いただいた上で、以下、ようやく本題。

ことの起こりは2004年の7月末。
関西弁の男性からウチに唐突に電話があった。
「お久しぶりです、嬉野さん。Kです」
Kって誰だっけ?
電話の向こうの相手が誰なのか判らず当惑していると、そのKさんは、
「Kです。SNKプレイモアの」
「ああ……どうもお久しぶりです」
ようやくぼくも思い出した。
結果的にぼくにとっての最後のノベライズとなった『2001』の時、製作スタッフのみなさんに取材するために大阪へ行った際、いろいろとお世話になった広報さんだ。
当時は、倒産したSNKからプレイモアへの移行時期で、Kさんの名刺がまだSNK名義だったのを覚えている。

そのKさんから、いきなりの電話である。
世間話もそこそこに、Kさんはいった。
「それでですね、きょうご連絡さしあげたのはですね、嬉野さんのお力をお借りしたいと思いまして」
「は?」
「実はですね、今度のこふのシナリオ作りをお願いしたいんですわ」
「今度のこふ……ですか?」
いまさらいわずもがなだが、こふシリーズは、アーケード作品(要するにゲームセンターにある業務用のゲーム)として、第1作の『'94』から年1作のペースでリリースされてきた。
ストーリー上、『'94』から『'97』までが「オロチ編」、ストーリーのないスペシャル版を1本はさんで『'99』から『2001』までが「ネスツ編」と呼ばれていて、もう1本スペシャル版をはさんだ『2003』からは、正式にはどう呼ぶのか知らないが、ひとまず「アッシュ編」ともいうべきあらたなストーリーがスタートしている。
昨年、年イチのペースが崩れてしまったが、『XI』というタイトルの最新作が近々稼動する予定だ(2005年9月現在)。

実はぼくはこの電話があった時点で、『2003』は未プレイだった。ただ、新シリーズがスタートしたということだけは知っていたので、
「あれはもう、きっちりストーリーが決まってるんじゃないんですか? そういうお話をいただけるのは光栄なんですけど、今からぼくが首を突っ込むのも……」
「いやいや、お願いしたいのは3Dのほうのこふですねん」
「あ、マキシマムインパクトですか」
毎年リリースされているこふは、いわゆる2D格闘だが、その当時、シリーズ10周年記念作品として新規に開発されていた『KOF MAXIMUM IMPACT』(以下『Mi』)は3Dだ。
公式サイトには京サマや庵のポリゴンモデルが紹介されていて、ぼくも、「ついにこふも3Dになったのか〜」くらいに思っていた。
その『Mi』のシナリオを、ぼくにやってくれというのである。ナンバーつきの本家こふスタッフは本家の開発だけで手一杯で、『Mi』まで手が回らないのだそうだ。
「社外の人間にそういうことを頼むのであれば、やはり嬉野秋彦しかいない」
SNKがそう思ってくれていたのは、作家としてというより、一ファンとしてとても嬉しいことだった。
『どうです? 引き受けていただけませんか?』

でも、この時、ぼくは、イエスとはいわなかった。

つづく。

『Mi:2』日記01 2005/09/16
判らない人にはさっぱり判らない話。おもにSNKファン向け。

きょうは東京ゲームショウ2005の初日、ビジネスデーである。
ビジネスデーというのは、おもに業者人やマスコミ向けの展示をする日であって、翌日&翌々日のファミリーデーとは違い、一般客お断りが原則である。
『KOF』シリーズのノベライズをやっていた関係で、ぼくは以前から、ビジネスデーを選んでちょくちょくゲームショウに行っていた。
そして、ノベライズをやらなくなった今でも、千里を遠しとせずに幕張までよく出かけている。

というわけで、今年のゲームショウ。
Xbox360、プレイステーション3、それにRevorutionと、年末から来年にかけてまたもや次世代ゲーム機が続々登場するとあって、今年はビジネスデーからかなりの人出だった。
ぼく個人としても、『DOA4』やら『PSU』やら『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』やら、あるいはコーエーの次世代機向けの新作やら、見たいものはいろいろとあったのだが、きょうの一番のお目当てはSNKプレイモアのブースである。
今年のSNKブースでは、据え置き機用のタイトルが多数出展されていたが、発売ずみのものも発売前のものも含めて、そのほとんどが実際に遊べる状態になっていた。
たとえば、現在アーケードで絶賛稼働中の『ネオジオバトルコロシアム』や、おととい稼動が開始したばかりの『サムライスピリッツ天下一剣客伝』のPS2版も、実際にPS2で動いているものが展示されていて、ぼくもちょこちょこと遊ばせてもらった。
そんな中、唯一映像のみでの出展となっているのが、来春発売予定の『KOF MAXIMUM IMPACT 2』である(以下『Mi:2』)。
クールでスタイリッシュなポリゴンイケメンたちによるスピーディな対戦格闘ゲームの続編が、昨年のショウでの第一報から丸1年をへて、ついに明らかにされるのだ! これは『KOF』ファンならば何をおいても見ておかねばなるまい――と、ステージ前の席を確保するぼく。

ところが、大スクリーンで『Mi:2』のムービーが紹介されたのに続いておこなわれたプレスカンファレンスで、壇上に上がった『Mi:2』のプロデューサーのFALCOON氏が、ステージ下にいるぼくのほうをちらちら見ながら、司会進行のおねえさんの質問に答えていうではないか。
「前作はストーリーがあんまりなかったもんですから、今回の『Mi:2』のシナリオはですね、ずっと『KOF』の小説を書いてた嬉野さんて人にお願いしてるんですよ」

……ずるい。
ぼくにはずっと「まだバラさないでくださいよ」って口止めしてたくせに、そんなにあっさりとバラしちゃうなんて!
だったらぼくも書いてやる! 書いてやるとも!

とまあそんなわけで、ぼくは『KOF MAXIMUM IMPACT 2』というゲームの仕事をしている。これまで「やってるぞー!」と大声でいいたくていいたくて仕方なかったのを、1年以上(!)も口をつぐんできたのだが、きょうでそれも解禁になったということで、これから少しずつ、裏話なんかを(もちろん当たり障りのない範囲で)ここに書いていこうと思う。

これも一種の宣伝活動ということで、とりあえず……あしたあたりからかな?

妄想 2005/09/14
表参道をぷらぷらと。

ネムネムとふたりで『吉原御免状』を観てきた。『SHIROH』以来の新感線ということになる。
ただ、キャストの大半が客演陣で占められていた『SHIROH』は、つまらなかったわけではないが、いつもの新感線のノリで楽しめるものだったわけでもなく、そういう意味では、市川染五郎版『髑髏城の七人』以来といってもいいかもしれない。
今回も、主演は堤真一、松雪泰子といった外部の役者だが、ぼく的に一番の見所は、新感線の主力メンバーがひさびさに同じ板の上に乗るということだ。

古田新太、高田聖子、橋本じゅん、粟根まこと。

この4人が最後に勢揃いしたのはいつだったか、もしかすると03年の『レッツゴー!忍法帖』だったかもしれない。
さらに、逆木圭一郎や右近健一、河野まさと、村木よし子に山本カナコといったお馴染みのメンツまでが勢揃いしていた舞台となると、もっと前までさかのぼらなければならないと思う。劇団員たちの出入がどうなっているのかよく判らないが、今回の芝居には、新感線のほぼ全員が出演しているのではなかろうか。
ある意味キレ芸人のこぐれ修はいないみたいだが、ともあれ、これは楽しみである。

――と、そう思って観にいったのだが。
内容はともかく、キャスティング的には、少し肩透かしを食らった感じだった。
敵役の古田新太こそさすがの存在感を発揮していたが、ぼくの好きな高田聖子は後半のアタマくらいにちょろりと出番があっただけ、橋本じゅんには大汗かくような立ち回りもナシ、粟根まことはいつもの中間管理職的ヤラレ役といったあつかい。
それ以外のメンバーに関しても、正直、端役といっていい役どころに振られていた。

それは、客演陣の豪華さを思えば仕方のないことなのかもしれない。あのメンツを差し置いて前に出ていいのは、新感線では古田新太だけだ。
加えて、今回の芝居が原作モノなので、いつものような当て書きによるキャラを――橋本じゅん=筋肉バカとか、粟根まこと=陰険インテリ眼鏡とか、右近健一=フレディとか、そういう強烈なキャラを――登場させられなかった、という理由もあるだろう。今回はボーカルつきの曲もいっさいなかったし。

そのあたりに一抹の物足りなさを感じつつ、劇場をあとにする。
せっかく青山まで来たわけだから、本当はセンプレデザイン(というデザイン家具とかのお店)に行きたかったのだが、軽くお茶だけ飲んで家に帰った。

帰宅すると、自宅の玄関の前で、リムリムが膝をかかえてへたり込んでいた。学校から帰ってきたら玄関のカギがかかっていて、いくらドアホンを鳴らしても誰も出てこないため、途方に暮れていたらしい。
そういえば彼女には、ぼくとネムネムがきょう芝居を見にいくことを告げていなかったっけ。
この前カギを持たずに外出したのはリムリムの責任だが、今回はぼくたちが伝えておかなかったせいだ。すまんすまん。

その代わりといっては何だが、きょうはリムリムの好きなお寿司でも食べよう。

妄想 2005/09/12
ああっ!

エッジ王立図書館がまたリニューアル!
ついにエッジ子ちゃん(仮名)が動き出した!

妄想 2005/09/11
おとといの続き。
西荻窪→三軒茶屋→水道橋→西荻窪→水道橋→飯田橋→西荻窪
この迷走っぷりの真実とは?

乾杯の音頭がかかって、ようやく本格的に食べるぞと意気込んだ矢先、ネムネム経由でリムリムから驚くべき知らせがぼくのところに飛び込んできた。
「カギがなくて家に入れなくてさあ――」
何だと!?
きょうはぼくは夜の10時頃まで家に戻らないつもりでいた。
夕方から始まるファミ通のパーティは、だいたい7時前には終わる予定だが、そのあと、ファミ通文庫やマジキュー編集部が主催して、場所を変えて二次会をやることになっているのだ。どちらかというと、ずっと立ちっぱなしでいなければならないパーティよりも、この二次会のほうがずっと楽で楽しかったりする。
当然、ぼくもそっちまで出るつもりでいた。

ところが、学校が終わって家に帰ろうとしたリムリムが、今頃になって自宅の鍵を忘れてきたことに気づいたとかいい出しやがった。
「きょうはぼく、帰りが遅くなるから、忘れないで鍵を持ってきたまえよ? でないときみ、帰ってきた時に家に入れないから」
「うん、判った」
とかいう朝の会話は何だったんだ!?
せっかくの楽しいパーティ気分に水を差されて腹が立ったが、かといって放っておくわけにもいかない。ネムネムが仕事先から抜けられない以上、ぼくがどうにかするしかないのだ。
「すいません」
ぼくは副編集長を見つけて事情を説明し、会場をこっそり抜け出して駅に走った。
時計を確認すると、時刻は5時45分だった。
実際、今から自宅に向かったら、パーティが終わる前にふたたび会場に戻ってくることは難しいだろう。それでも、地下鉄&黄色とオレンジの電車を乗り継ぎ、杉並へと急ぐぼく(水道橋→西荻窪)。

「とりあえず、今は友達とかといっしょにいるのかね?」
移動中、リムリムに連絡を取って現状を確認する。
『うん』
「じゃあ、とにかく家に戻って玄関の前で待っているように!」
それだけ伝えて最寄り駅で電車を降り、駅前でタクシーを拾うと、運転手さんを急かして自宅へ。
ところが、門を開けたぼくを待っていたのは、あっけらかんと笑っているリムリムだった。
「いや〜、カギはきちんとバッグにしまっといたんだけどさ〜、間違えて別のバッグ持って出かけちゃったんだよね〜」
おおお……! どうやらこの子は、自分のしでかしたヘマの重大さに気づいていないらしい! 何が面白くてそんなヘラヘラしてやがるのか? ぼくはちっとも面白くないぞ!

「きょうは年に一度のパーティなんだぞ!? それをこんなくだらないチョンボで台ナシにしやがって! 編集部や受賞者のみなさんにあやまれ! 泣いてあやまれ!」
と、おおいに叱責してやりたかったが、あいにくとそのヒマもなかったので、
「きょうはもう家でおとなしくしてろ! 説教はあしただ!」
と精いっぱいすごんで玄関の鍵を開けてから、待たせていたタクシーで西荻窪駅に大慌てで引き返し、ちょうど到着したのぼり電車に飛び乗ったのだった(西荻窪→水道橋)。

結局、ぼくがふたたびホテルにたどり着いたのは、乾杯から一時間半後、パーティもお開きになろうかという頃だった。
水道橋から飯田橋に場所を移しての二次会になんとか間に合ったのは、不幸中のさいわいというより、奇跡的な接続のよさとぼくのフットワークの賜物である。

二次会はタイ料理屋だった。
パッタイとかガイヤーンとか、ぼくの好物が出なかったのはちょっと残念だったが、精神的にイヤな汗をたっぷりかいたおかげか、シンハービールが進む進む。
まあ、腹の底ではいまだにリムリムへの怒りがくすぶっていて、ぜんぜん酔えなかったのだが。


……以上、これが今回の迷走の真実である。
広島在住の某先生から、「香港映画のヤクザみたいですね」と表現されるようなカッコで、中央線添いに西へ東へ行ったり来たりする羽目になり、例年になく疲れるパーティになってしまった。だが、それはすべてただひとり、よりによってこの大切な日を選んでドジを踏みやがったリムリムのせいである。
そしてなにより腹立たしいのは、ぼくがいったん家に戻った時に顔を合わせたリムリムに、このことを反省している様子がほとんどなかったということだ。
基本的に、ぼくはあまりリムリムを怒鳴りつけたりはしないのだが、さすがにこれには腹が立った。あの小娘は、ぼくのみならず、関係者各位にまで迷惑をかけたのだということが判っていない。
ここは断固たる態度で臨まねばなるまい。
フローリングの床の上に正座させて、しくしく泣くまで説教してやる

そんな決意を胸に、ぼくはその日2度目の家路についた(飯田橋→西荻窪)。

妄想 2005/09/09
西荻窪→三軒茶屋→水道橋→西荻窪→水道橋→飯田橋→西荻窪
見よ、この迷走っぷり。

きょうはエンターブレインの「えんため大賞」の受賞パーティがあった。例年なら、呼ばれていってホテルの料理を食べてほかの作家さんたちとおしゃべりしておみやげもらって解散! というヒジョーにお気楽なひと時のはずなのだが、今年は小説部門の選考委員のひとりに名前を連ねているので(もちろんぼくが、だ)、そうそう呑気に構えてはいられない。パーティの前の授賞式から出席しなければならないので、遅刻などもってのほかだ。
それに、多少はマトモなカッコをしていかなければいけないということで、少し早めに家を出て、以前からお世話になっている三軒茶屋の美容師さんのところへ(西荻窪→三軒茶屋)。

その後、会場である東京ドームホテルへ直行(三軒茶屋→水道橋)。
実は授賞式ではぼくも小説部門の選考結果に関してひと言コメントを述べなければならないのだが、それを知ったのが当日の朝だったため、この時点でも何をしゃべろうか考えている最中だった。
もっとも、ここで問題となるのはコメントの内容ではなく、人前でそのコメントをしゃべるということなのだ。実際、大勢の人たちの前で何かコメントするなんて、それこそ10年以上も前の、集A社で賞を取った時の授賞式以来かもしれない。

「いやー、事前にお知らせしないでいきなりしゃべってもらったほうが、嬉野さんの場合はいいコメントが出てくると思ったんですよ」
どこまで本気なのか、編集さんたちがそんなことをいっていたが、いわれてみれば確かに、数日前からどんなにいいコメントを考えておいたとしたって、現場で咄嗟にそれが出てこなければ意味がない。実際にぼくが口にしたのがいいコメントだったのかどうか、ぼく自身、緊張のためによく覚えていないのだが、まあ、そこそこ詰まらずにしゃべれただけでもよしとしよう。

そんなこんなで授賞式が終わり、会場を移してパーティが始まった。
こうなるとぼくには特に仕事はない。せいぜい小説部門の受賞者のみなさんとおしゃべりをするとか、記念撮影に参加するとか、せいぜいその程度だ。
と思っていたら、某編集さんが、どこかで見たことのあるすらりとした女性を連れてきて、
「嬉野さん、嬉野さん、こちら森さんです」
髪をアップにされていたので一瞬気づかなかったが、森薫さんだった。
「ああっ! ど、どうも、うう、う、嬉野です!」
緊張気味に名刺をお渡しするぼく。
ビームで仕事をなさっている森さんと、ファミ通文庫で小説を書いているぼくとでは、考えてみればほとんど接点はないのだが、ぼくが『エマ』大好きっ子(正確にはドロテア奥さま大好きっ子)だと知っていた某編集さんが紹介してくれたのだ。
しまった! 今にして思えば、もっと英国紳士風の語り口で挨拶すればよかった!

とまあ、嬉しいサプライズなどありつつ、みんなで乾杯した直後、事件は起こった。

以下、次回へ続く。

妄想 2005/09/05
BL30――ボーイズラブ成分30%含有。

という意味ではないはず。断じて。
吉祥寺の駅前から西に向かい、繁華街と住宅街のたたずまいが入れ替わるあたりに、「ダンディゾン」というパン屋さんがある。
ギャラリーかブティックのようなオシャレな造りの店で、パン好きたちの間ではわりと有名らしい。実際、同じ建物の2階がギャラリー、1階がブティックになっていて、くだんのパン屋さんは地下1階にある。
きのう、そこへ行ってみた。

以前、ネムネムやリムリムとここへ来た時、パンの前に1階のブティックを見てみたいという女どもの意見を取り入れたところ、気づいたらパン屋さんの営業時間が終わっていたという悲劇を見たので、今回はぼくひとりで乗り込んでみた。
パン屋というあたたかげな響きからは想像もつかないクールで無機的な店内は、まさに前衛的なギャラリー状態だった。よくあるパン屋のような、トレイとトングで好きなパンを選ぶという買い方ではなく、欲しいパンがあったら店員さんに声をかけて、その店員さんに取ってもらうという買い方で、しかも選んでいる横から店員さんがパンの解説を勝手に始めてくれるところは、これまたブティックさながらである。

そこでぼくがあしたの朝食にと思って買ったのが、「BL30」というスタンダードな食パンだった。
食パンといっても、サイズ的には市販の食パンの半分程度で、逆に価格は3倍くらいする。ここは有名な店なので、いろんなサイトやブログで紹介されているのだが、みんなが声を揃えてまず主張しているのが、とにかく高いということだった。
だが、ぼくとしてはその価格より、「BL30」という冷徹なネーミングが気になった。ここにはほかにも、「BE20」や「S77」といった食パン系のパンがある。あんぱん系のメニューにはわりと当たり前な名前がつけられているのに、この基本の3種類にだけ、こんな記号みたいな名前がついているのだ。

BLといえば、ぼくたちの業界的にいえばボーイズラブと決まっている。すなわちこのパンにはボーイズラブ成分が30%ほど含有されているということなのか。
そういえば厨房ではたらくスタッフは、みな線の細いハンサムな男性たちばかりだ。
さては……! いや、まさか……?

「そんなバカなことあるわけないでしょ」
翌日、軽くトーストしたパンをもしゃもしゃ食べながら、眠そうな顔でネムネムがいった。
「サイトにこのパンの説明が書いてあるじゃん。フレッシュバター30%+牛乳って」
「あ」
「要するに、BはバターのB、Lは牛乳のLってことでしょ」
「バターはともかく、牛乳はLではなくGでは?」
「素でボケてどうするの? 日本語じゃなくてフランス語よ。牛乳はフランス語でLaitって書いてレって読むの。カフェ・オ・レのレ。つまりこのパンはバター&牛乳、フランス語でいえばBeurr et Lait(ブール・エ・レ)ってことでしょ」
さすがはネムネム、遠い忘却の彼方に消えつつあるとはいえ、大学時代にフランス語を習っていただけのことはある。
「じゃあBE20は? バター20%+水のスタンダードなパンって解説されているが」
「Beurr et Eau、ブール・エ・オーでしょ、きっと」
「むう」
「何にしても、このパンの一番の欠点は、あっという間に食べ終わっちゃうってことよね。おいしいのは間違いないけど」
「うん、ホントおいしいよね〜」
フレンチやイタリアンのお店に行くと、時にメインディッシュが来る前にパンだけで満腹になってしまうことがあるという、無駄に不思議な才能を持つリムリムは、高いパンを手で豪快にちぎって食べている。
なるほど、こんな偏食娘がいるかぎり、確かに毎朝の食卓にこのパンをバスケットに入れて出すわけにはいくまい。

妄想 2005/09/03
ついに800曲オーバー、3.2ギガ、トータル演奏時間2.4日。

ネムネムのiPodの話である。
いろいろと取捨選択をして、半分以上インポートを断念したにもかかわらず、最終的にこれだけの量になった。正直いって、こんなに大量の曲を詰め込んでいたら、お気に入りの曲がなかなか聞けなくてイライラしてくるのではないか。
もちろん、そうならないようにするための機能もiPodにはあるのだが、ネムネムがそれを使いこなせるとは思えない。何より、彼女はいまだにマニュアルを1ページたりとも開いたことがないはずだ。
でなければ、会社から持ち帰ってきたあらたなCDを、
「はい、お願い」
などと平然とぼくに渡すはずがない。

まあ、何だかんだでそのインポート作業をやってしまうぼくが、つまりは善人すぎるのかも知れないが。

それはそうと、きょうは3人で病院に行ってきた。
ぼくとネムネムの共通の知人が、8月の末に無事に男の子の赤ちゃんを出産したというので、そのお見舞いである。
「わー、かわい〜」
ネムネムとリムリムが赤ちゃんを見てそんなことをいっているそばで、ミックスベリーのタルトを手にしているぼく。お見舞いを持っていったはずなのに、なぜかご馳走になることになってしまった。
「家族からの差し入れなんですけど、食べきれないから食べてってくださいよ〜」
敵はベリーの層とスポンジケーキの層の間にとろ〜りとした甘〜いチョコがサンドされた、なかなか破壊力のありそうなタルトで、なるほど、これは新米ママさんにとってはなかなかの難敵であろう。おそらくきょうこの日にぼくがお見舞いにきたのは、彼女を救えという天の采配なのだ。
なので、遠慮せずにばくばくいただくことにした。
ああうまいうまい。

病院の帰り、大学の頃によくこのあたりを歩いていたというネムネムが、かつての行きつけの紅茶専門店に行ってみたいというのでぶらりと散策してみたが、ただ単に、ネムネムの記憶のあやふやさ、方向オンチさを露呈しただけだった。
そういえばネムネムは、前にぼくがすんでいたマンションへの道順も、最後の最後まで覚えられなかった。
要するに、そういう女だ。